「海外農林業情報No.83」

海外農林業情報 No.83 (2018年4月12日


米国農務省による穀物需給見通し

米国農務省は3月29日に、2018年の米国の作付意向調査を発表し、4月10日に、2017/18年度の穀物を中心とした世界の農産物の需給見通しを発表しました。今年初めより、南半球の気象条件の悪化を受けてトウモロコシと大豆の先物取引の値動きが荒くなっておりました。また、米国の中西部の寒冷気候から冬小麦の作柄悪化と春小麦の播種遅れが予想され、小麦の価格が上昇気味となっています。このような状況を踏まえて、今回の米国農務省による今年度の作物見通しが注目されていました。

各見通しの概要は次の通りです。

(1)小麦
2017/18年度の小麦供給量は、生産量が過去最高の7億5980万トンとなることが見込まれ、また消費量の減少により在庫が増加していることから、300万トンの増加が見込まれています。

小麦輸出は、ロシア、カザフスタン、アルゼンチンで増加が予想されますが、EU等で減少が予想されることから、世界全体では前年と変わらないと見込まれます。小麦輸入は、モロッコ、ブラジル、コロンビアで減少が見込まれる一方、アルジェリア、エチオピア、日本、ケニア、トルコ、フィリピンで増加が予想されます。

消費も増加が見込まれますが、この増加分を供給量が上回るため、2017/18年度の期末在庫は、過去最高の2億7120万トンに達すると予想されます。

(2)トウモロコシ
2017/18年度の世界全体の粗粒穀物生産は、アルゼンチンとブラジルでの減産見通しを受けて、700万トン減の13億1500万トンになると予想されます。

トウモロコシの輸出は、ブラジルとアルゼンチンで減少が予想されます。輸入に関しては、イラン、マレーシア、台湾、メキシコ、チリで減少し、バングラデシュとトルコで増加すると予想されています。

期末在庫はアルゼンチン、パラグアイ、ブラジルで大きく落ち込むと見込まれます。この期末在庫見通しに、これからの米国を中心とした北半球の生産が加わって、2018/19年度の供給となります。3月末に発表された米国の作付意向調査によると、2018年のトウモロコシの作付面積は、南半球の情勢にもかかわらず、依然としてこれまでの傾向通り2%減少すると予想されています。

(3)大豆
2017/18年度は、大豆の生産が大きく落ち込み、世界の油糧種子生産量は前月比570万トン減の5億6880万トンになると予想されます。大豆の生産を国別に見ると、ブラジルでは生育時期に十分な降雨があったため増加が予想されていますが、アルゼンチンでは1月から3月にかけての乾燥した気候により、減産が予想されています。インドとウルグアイでも減産が見込まれており、世界全体では減産分が増産分を上回っています。

大豆の輸出に関しては、ブラジル、ロシア、ウクライナで増加が見込まれますが、アルゼンチンとウルグアイでの減少がこれを上回るため、世界全体では20万トンの減少が予想されています。

大豆の期末在庫は、アルゼンチン、ブラジル、EUでの減少により、世界全体では360万トン減の9080万トンになると見込まれます。今後は米国の生産が加わりますが、作付意向調査によると、南半球の状況にもかかわらず、2018年の作付面積は1%減少すると予想されています。

(4)コメ
2017/18年度のコメ生産は、ブラジル、ミャンマー、パキスタン、フィリピンでの増産により、世界全体では120万トン増加し、過去最高値に達する見込みです。タイ、ミャンマー、インド、パキスタンでは輸出の増加が見込まれ、インドネシアとバングラデシュでは輸入の増加が見込まれています。

消費の減少と供給の増加により、世界全体の期末在庫は140万トン増えて、過去2番目の水準となる1億4440万トンに達すると予想されます。この中で、米国に関しては、作付意向調査によると、2018年の作付面積は9%増加が予想されています。これは、競合作物の価格が低下していることによるもので、増加の大部分は長粒種となっています。


最近の米中貿易摩擦を受けてシカゴ穀物市場が動揺しています。中国は米国の農産物の主要輸出先であるため、中国の報復措置を懸念して大豆などの価格が4月に入ってから急落し、その後懸念が和らいだとして値上がりに転じるなど値動きが激しくなっています。今後も米中の動向から目が離せない状況が続きそうです。


<参考リンク・参考資料>
Prospective Plantings(3/29、USDA、英語)
World Agricultural Supply and Demand Estimates(4/10、USDA、英語)
小麦の国際価格一段高(4/11、日本経済新聞朝刊)


文責:森 麻衣子

 

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海外農林業情報 No.67 (2016年12月22日


日EU間のEPAの動き

日EU間の経済連携協定(Economic Partnership Agreement, EPA)は、2013年3月の首脳間合意により開始されました。これは、関税撤廃や投資ルールの整備等を通じて貿易・投資を活性化することを目指して、日本にとってはTPPと並ぶ、EUにとっては米国と交渉中のTTIPと並ぶ「メガFTA」の一つとなることを目指したものです。

交渉は、2014年4月には物品の関税引下げオファーが、さらに7月には投資、サービス分野の自由化のオファーが交換され、本格化されました。しかしながら、交渉分野としても、物品、サービス、知的所有権、政府調達、投資ルール、非関税障壁ということで、TPPより範囲が限られており、また、日本側としては、TPP交渉が先行しており、この枠を出ない対応にならざるを得ない状況となっていたと思われます。また、交渉は、交渉官レベルで積み重ねられており、双方とも具体的な内容を公表しないということで不透明なところがありますが、EU側の関心は、チーズ、豚肉、ワインの市場アクセス改善と地理的表示(GI)の保護、地方公共団体・鉄道の調達(政府調達)の拡大、自動車、加工食品、医薬品等の基準認証に関する非関税措置、日本側の関心は、EUの工業品の関税撤廃、特に自動車の10%関税、電子機器の14%関税の撤廃、日本側の投資企業に対する欧州側の規制問題等で、これらに集中して交渉が行われたようです。

双方は、2016年中の合意を目指していましたが、12月12日から16日までの交渉会議で終着点が見出せず、再度来年1月に会合を持つこととなったと発表されました。EU側の記者会見によれば、残る重要問題は、日本のチーズ、豚肉の市場アクセスとEUの工業品の関税だったようです。EU側は、日本のチーズ、豚肉問題の対応によって自動車、電子機器の関税引き下げに応ずる準備はあるとのことで、また、EU側交渉官によれば、豚肉では、「前進があった」とされています。双方とも、グローバリゼーションのモメンタムを維持するためにも、何とか米国のトランプ大統領の就任式(1月20日)前に決着を図りたい意向があるようで、1月の交渉、その直後にでも閣僚交渉を行っていく構えのようです。もし、この機会を失するとフランス、ドイツの選挙、3月には、英国離脱の通告が予想されているため、これも漂流せざるを得なくなるのではないかと言われています。

<参考リンク>
経済連携協定(EPA)/自由貿易協定(FTA)(外務省ホームページ)
年内の大枠合意難しく(日本経済新聞、12月17日朝刊)
日欧EPAに時間の壁(日本経済新聞、12月18日朝刊)
日欧EPA年内大枠合意見送り(日本農業新聞、12月18日)

 

( 文責:森 麻衣子)

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