『海外農林業情報 No.93』

海外農林業情報 No.93 (2019年1月23日

 

 


FAO食料価格指数(FFPI)は、FAOが毎月主要食料の総合指数を計測し、発表するものです。世界の農産物市場の動向をモニタリングするため1996年に導入され、5つのグループの価格指数の平均値(各グループの輸出シェアにより加重平均)で構成されています。具体的には、穀物(小麦、トウモロコシ、コメ)、乳製品(バター、全脂粉乳、脱脂粉乳、チーズ)、肉類(鶏肉、豚肉、牛肉、羊肉)、砂糖、植物油(大豆油、ヒマワリ油、ナタネ油、落花生油、綿実油、コプラ油、パーム核、パーム油等)を対象としています。また、基準年を2002?2004年として、その平均指数を100としています。

FAOは1月に入り、2018年の最終値となる12月の価格指数と過去の動向を発表しました。2018年全体を通じた平均価格指数は前年比3.5%減の168.4ポイントで、食料価格が世界的に高騰した2011年と比較すると27%低い水準となっています。2018年は砂糖価格が大きく落ち込んだ一方、主要穀物の価格は上昇しました。

内訳を見ると、穀物の12月の価格指数は167.1ポイントと前月より1.8%上昇しました。このうち小麦は、アルゼンチンでの天候不良による収穫への懸念とロシアでの輸出供給量の不足があるものの、引き続き輸出競争が厳しいため、わずかな価格上昇にとどまっています。トウモコロシも世界的な需要が堅調で、南半球の天候への懸念もあることから、国際価格が上昇しています。一方コメは、貿易が不調であることから6ヵ月連続で価格が低下しています。2018年全体で見ると、穀物の平均価格指数は前年比9%増の平均165ポイントとなりました。穀物全体の供給量は十分にあるため在庫は高い水準に保たれていますが、小麦とトウモコロシの減産が価格を押し上げています。

植物油の12月の価格指数は10ヵ月ぶりにわずかに回復し、125.8ポイントとなりました。これはヤシ油の価格が、生産国での国内需要と輸入国での堅調な需要に支えられて上昇したためです。一方、大豆は米国での十分な供給により、またナタネはEUでの需要減により、それぞれ価格が下落しています。鉱物油の価格低下も、植物油の価格を引き下げています。2018年全体で見ると、植物油の平均価格指数は前年比15%減の144ポイントで、2007年以来最も低い水準となりました。このうち価格が最も大きく落ち込んだのはヤシ油で、世界的な需要低下と主要生産国での在庫増加が要因となっています。

食肉の12月の価格指数は前月より0.8%回復して163.6ポイントとなりました。羊肉はオセアニアからの輸出供給力が高まったことで価格がわずかに下がった一方、豚肉はブラジルを中心に世界需要が高まり価格が上昇しました。2018年全体で見ると、豚肉と鶏肉の価格低下が羊肉の価格上昇を相殺し、食肉の平均価格指数は前年比2.2%減の166.4ポイントとなりました。

乳製品の12月の価格指数は前月比3.3%減の170ポイントとなり、7ヵ月連続で低下しています。これは、バター、ミルク、全脂粉乳に関して特にニュージーランドからの輸出供給力が高まっているためです。一方、脱脂粉乳は世界的に輸入需要が高まり価格が上昇しています。2018年全体で見ると、すべての品目において年度後半に価格が低下したため、乳製品の平均価格指数は前年比4.6%減の192.9ポイントとなりました。

砂糖の12月の価格指数は前月比1.9%減の179.6ポイントとなりました。インドでの生産が予想よりも早く進んでいることなどから、価格が下落しています。また、石油価格の下落に伴いサトウキビ由来のエタノール生産が縮小し、特に最大生産国であるブラジルで砂糖生産向けの供給力が高まったことも砂糖相場の動きに影響を与えています。2018年全体で見ると、平均価格指数は前年比22%減の177.5ポイントとなりました。


表1 FAO食料価格指数の推移
 
出典:http://www.fao.org/worldfoodsituation/foodpricesindex/en/ より抜粋

(文責:森 麻衣子)

<参考リンク>
FAO Food Price Index(FAO)


米中協議、日米TAG交渉

今、米国にとって通商分野の最優先課題は中国との協議です。知財の侵害や貿易赤字の削減をめぐる米中協議は、1月7日から9日まで北京で次官級協議が行われました。米国通商代表部(USTR)の声明によれば、中国側は大量の農産品、エネルギー、鉱工業品の購入を約束した模様です。次のステップは、1月中に中国の劉鶴副首相が訪米してライトハイザーUSTR代表と知財問題などで踏み込んだ交渉を行う、と報道されています。米中協議は3月1日が期限とされており、それまでに合意できなければ、米国は、昨年9月に発動した知財侵害を理由とする2000億ドル分の追加関税の比率を10%から20%に引き上げると表明しています。

このような状況で米国側に対日交渉の余裕がなく、1月から予定されていた日米TAG(物品貿易協定)交渉については、開始時期がなかなか見えない状況になっているようです。4月以降の開始になるのではとの見方も出ているようです。
TPP11が昨年12月30日にすでに発効し、日EU・EPAも2月1日に発効します。しかも、これらはともに4月から関税削減等が2年目の水準に入ります。例えば、牛肉は、TPP発効前に38.5%だったのが、発効時(1年目)に27.5%になっており、4月から(2年目)は26.6%に下がります。このため米国農産物が日本市場で不利な立場になり、米国農業団体からの圧力は一層増してくると思われます。

TPP
TPP11の発効を受けて、協定の最高意思決定機関であるTPP委員会の初会合が、1月19日に参加11ヵ国の閣僚らが出席して東京都内で開催されました。同委員会の正式メンバーは、国内手続を終えた締約国とされており、現時点では、メキシコ、日本、シンガポール、ニュージーランド、カナダ、オーストラリアおよびベトナムの7ヵ国です。

本会合において、議長国のローテーション、紛争解決手続や次のような新規加入の手続が決定されました。(1)加入希望エコノミー(国・地域)は、協定の寄託者であるニュージーランドに通報する、(2)加入希望の通知を受け、TPP委員会でWG立ち上げを決定する、(3)WGで交渉した後、加入の是非を委員会で決定する等、となっています。

また、19日の会合では、「本協定は、(効果的で、開かれた、包摂的な、ルールに基づく通商システムという)これらの原則を受け入れ、かつ、本協定の高い水準を満たす意志がある全てのエコノミーに開かれていることを繰り返し表明し、これらの新たなエコノミーの加入を通じて本協定を拡大していくという強い決意を確認した」とする共同声明が採択されました。TPPには、タイ、英国が加盟意向を示しており、その他のアジア諸国も関心を示してくることが考えられます。
(文責:藤岡 典夫)

<参考リンク>
USTR: Statement on the United States Trade Delegation’s Meetings in Beijing(USTR、1/9)
2019年1月の東京における第1回TPP委員会について(内閣官房TPP等政府対策本部) 


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