『海外農林業情報』No.74

海外農林業情報 No.74 (2017年7月18日


TPP11の協議

7月12日から13日まで、米国を除く環太平洋経済連携協定(TPP)参加11ヵ国の首席交渉官会合が神奈川県箱根町で開催されました。米国の離脱を受けて、12ヵ国で合意したTPP協定をどのように修正するかが協議のテーマとなりました。
「参加国全体のGDPの85%以上を占める6ヵ国以上の国々の国内手続きの完了」と規定されている今の協定の発効要件を見直す必要があることはどの国も認識しているのですが、問題はこれをどのように変更するのかです。その方法として、今の協定を維持しつつ11ヵ国で議定書を作成して発効要件等に関して共通認識を確認するいわゆる「議定書方式」と、今の協定を修正して11ヵ国で新協定を作り直す「新協定方式」という2つの方式が議論されたようです。
TPP11をめぐっては、日本やオーストラリア、ニュージーランドなどは、発効要件以外の合意内容の見直しは最小限にして早期発効を目指す考えなのに対し、米国への市場アクセスの拡大を前提にTPPに参加したベトナムやマレーシアは消極的な姿勢とされ、カナダも北米自由貿易協定(NAFTA)の再交渉との関係で二の足を踏んでいると伝えられています。今回の会合では、「協定の変更は最小限にとどめる」ことが確認されたようですが、その修正の中身までは十分な議論が及ばなかったようです。発効要件のGDP比率の見直しは当然とされていますが、ルールの分野での医薬品のデータ保護期間の短縮、一部の譲許関税の留保等が主要な論点となっているようです。
首席交渉官会合は、11月に予定されているベトナムでの首脳会議までには、条約の形を整えることを求められており、次回会合は、8月末または9月初めにオーストラリアで開催し、その方向性を明確にしていくこととされています。

米国の小麦・トウモロコシの生産見通しと2017/18年度の世界需給状況
 米国農務省(USDA)は7月12日付で2017/18年度の米国の小麦・トウモロコシの生産見通しとそれを踏まえた世界の需給見通しを次のように発表しました。

・小麦
 2017/18年度の米国の小麦生産量は、6,400万ブッシェル減の17億6,000万ブッシェルになると見込まれています。このうち、デュラム小麦と春小麦は北部平原における深刻な干ばつの影響で、昨年に比べ大きく生産量が減少する見通しとなっていますが、、この減少分の一部は、収穫面積と収量が増えた冬小麦がカバーするものとみられます。
 世界の小麦生産量は、この米国の減、オーストラリア、中国、EUでの減少が見込まれる一方で、この減少分を、ロシアとトルコで期待される生産増が一部カバーするとみられます。ロシアの小麦はこれまでのところ、記録的な収量となった昨年に近い生育状況となっており、生産量は300万トン増の7,200万トンに達すると予想されます。トルコでも生育状況が良好なことから、生産量は150万トン増の1,950万トンに達すると見込まれます。EUでは、スペインとフランスで生産量の縮小が予想されることから、80万トン減の1億5,000万トンになるとみられます。オーストラリアでは、乾燥した気候の影響で生産量は150万トン減の2,350万トンになると予想されます。小麦についてはこのような生産状況に加えて期初の世界在庫が十分にあり、需給に大きな不安はないものとみられます。

・トウモロコシ
 2017/18年度の米国のトウモロコシの生産量は、6月30日に発表された作付け調査によれば、実取り用トウモロコシの作付面積は前年より4%減の8,350万エーカーとなっていますが、単収に変化はないとのことでした。しかし、7月半ばから下旬にかけての受粉期に生産地で乾燥した気候が続くとの予想から、単収の減の懸念が出てきており、この状況に投機筋の買いが増え、シカゴの先物取引市場は値上がりを示しています。
 このような米国のトウモロコシの状況が懸念されますが、2017/18年度の世界全体の粗粒穀物生産は増加が予想されています。したがって、2017/18年度の飼料用の粗粒穀物全体の需給は安定したものと予想されます。


<参考リンク>
TPP11発効要件で溝  首席交渉官会合、11月までに方向性(日本経済新聞、7/13付電子版)
TPP11発効へ修正協議 12日から首席会合(日本経済新聞、7/11付電子版)
World Agricultural Supply and Demand Estimate(USDA、7/12付)
トウモロコシ、1年ぶり高値圏 国際価格、主産地で減産観測(日本経済新聞、7/12付朝刊)

文責:森 麻衣子

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海外農林業情報 No.67 (2016年12月22日


日EU間のEPAの動き

日EU間の経済連携協定(Economic Partnership Agreement, EPA)は、2013年3月の首脳間合意により開始されました。これは、関税撤廃や投資ルールの整備等を通じて貿易・投資を活性化することを目指して、日本にとってはTPPと並ぶ、EUにとっては米国と交渉中のTTIPと並ぶ「メガFTA」の一つとなることを目指したものです。

交渉は、2014年4月には物品の関税引下げオファーが、さらに7月には投資、サービス分野の自由化のオファーが交換され、本格化されました。しかしながら、交渉分野としても、物品、サービス、知的所有権、政府調達、投資ルール、非関税障壁ということで、TPPより範囲が限られており、また、日本側としては、TPP交渉が先行しており、この枠を出ない対応にならざるを得ない状況となっていたと思われます。また、交渉は、交渉官レベルで積み重ねられており、双方とも具体的な内容を公表しないということで不透明なところがありますが、EU側の関心は、チーズ、豚肉、ワインの市場アクセス改善と地理的表示(GI)の保護、地方公共団体・鉄道の調達(政府調達)の拡大、自動車、加工食品、医薬品等の基準認証に関する非関税措置、日本側の関心は、EUの工業品の関税撤廃、特に自動車の10%関税、電子機器の14%関税の撤廃、日本側の投資企業に対する欧州側の規制問題等で、これらに集中して交渉が行われたようです。

双方は、2016年中の合意を目指していましたが、12月12日から16日までの交渉会議で終着点が見出せず、再度来年1月に会合を持つこととなったと発表されました。EU側の記者会見によれば、残る重要問題は、日本のチーズ、豚肉の市場アクセスとEUの工業品の関税だったようです。EU側は、日本のチーズ、豚肉問題の対応によって自動車、電子機器の関税引き下げに応ずる準備はあるとのことで、また、EU側交渉官によれば、豚肉では、「前進があった」とされています。双方とも、グローバリゼーションのモメンタムを維持するためにも、何とか米国のトランプ大統領の就任式(1月20日)前に決着を図りたい意向があるようで、1月の交渉、その直後にでも閣僚交渉を行っていく構えのようです。もし、この機会を失するとフランス、ドイツの選挙、3月には、英国離脱の通告が予想されているため、これも漂流せざるを得なくなるのではないかと言われています。

<参考リンク>
経済連携協定(EPA)/自由貿易協定(FTA)(外務省ホームページ)
年内の大枠合意難しく(日本経済新聞、12月17日朝刊)
日欧EPAに時間の壁(日本経済新聞、12月18日朝刊)
日欧EPA年内大枠合意見送り(日本農業新聞、12月18日)

 

( 文責:森 麻衣子)


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