ニュース

  • なおも続くミャンマーの麻薬撲滅

    Category: ミャンマー, 海外事情, お知らせ 2018年8月27日

    ミャンマー: JICAシャン州北部地域における麻薬撲滅に向けた農村開発プロジェクト運営指導調査(2018年7-8月)

    今回参団したのは、JICA「シャン州北部地域における麻薬撲滅に向けた農村開発プロジェクト運営指導調査」である。来年の終了を前にプロジェクトの活動現状と成果を確認し、関係者から成果の活用についてヒアリングすることが私のタスクであった。

    ミャンマーは軍事政権が続き、長らく経済開発が停滞したが、2011年の民政移管後は、経済制裁の解除とともに外国投資が増加。経済成長率も6.4%を超えた(世銀、2017)。

    一方で中央から遠く離れた国境山岳地帯は、少数民族武装組織との戦闘が続き、経済開発の波から取り残され住民の多くが貧困から抜け出せずにいる。そうした貧困を背景に麻薬生産等の非合法ビジネスが根強く残り、国の発展の大きな障害となりつつある。

    その最たる地域が今回訪問したシャン州北部地域。

    2000年に同地域は5.5万ヘクタール(グアム島とほぼ同じ面積)のケシ栽培が行われた。ラフに計算すると年間1.5億ドルの農家収入に相当する(5万ha × USD 3,000 /ha、2000年の筆者データ)。それを取り締ることは並大抵ではない。現場は少数民族武装組織が統括する僻地山岳地域。ケシからの転作普及はさらなる難題となる。

    それでもシャン州北部地域では、日本を含む国際社会の協力を得ながら2006年までに240ヘクタールまでの削減に成功した。

    しかし農家は生計を安定させることができず、徐々にケシ栽培へ戻る傾向が見られ、国連麻薬犯罪事務所(UNODC)が警鐘を鳴らしてきた。

    「ミャンマーはまだ麻薬の問題が山積している」

    内務省薬物統制部ゾー・リン・トゥン大佐が面談の冒頭に話を切り出した。「我々はケシ撲滅に大きな成果を見せているが、完了させなくてはならない。息長く、日本の協力も得ながら取り組みたい」

    ミャンマーは1999年に「麻薬撲滅15カ年計画」を策定したが、2014年までの撲滅までに至らず、最終年度からさらに5年間延長した。その動きにシンクロするかのごとく、JICAは2014年から5年間の計画で「ケシ栽培に回帰しない代替生計手段の創出と多様化」を目的とした「シャン州北部地域における麻薬撲滅に向けた農村開発プロジェクト」を実施している。

    今次調査でも日本の長期に亘る国境地域の麻薬(ケシ)撲滅支援へのコミットメントには高い評価が得られていた。また政府関係者には、「ケシ栽培農家に対する厳罰主義的な統制」だけでなく「農家の生活の権利にも配慮した代替開発支援」の重要性に対する認識が高まってきている。政府機関関係者の意識変化も感じられた。

    ミャンマー政府の内務省が薬物乱用統制中央委員会(CCDAC)は2016年に開催された国連総会特別セッションの議論を踏まえ、2018年2月に「National Drug Control Policy」を策定。さらに地域の実情に合わせた「Drug Control Strategic Plan」を地方政府毎に作成予定で、そこでは「覚醒剤蔓延防止」、「若者の薬物乱用対策」にも積極的に取り組むという。

    東南アジアはASEANを通じてひとつの経済圏を構築する動きが活発化しているが、コネクティビティの改善は薬物に代表される越境性犯罪の広がりにも繋がっていくことが懸念されている。

    2017年時点、ミャンマー全体で4.1万ヘクタールのケシ栽培が残っている。ケシ撲滅の戦いはまだ簡単に終わりそうにない。

    JICAプロジェクトがモデル村で実施している生計向上活動の数々。内務省薬物統制部。右から2人目がゾー・リン・トゥン大佐。
    プロジェクトが代替作物として普及しているコンニャクとコーヒーの林間栽培。

    国境省少数民族大学。全国から80以上の民族の学生が集う。卒業後は教員となって国境地域に戻る。

    かつてあちこちで見ることのできたケシ(写真は2001年)。少数民族武装組織(写真は2000年)。

      

    (報告:M. Y.)

     

    海外事情のバックナンバーはこちら