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『海外農林業情報』No.42

海外農林業情報 No.42 (2015年5月1日)


TPP 最終交渉段階へ

4月28 日の安倍総理およびオバマ大統領の首脳会談に向け、TPP に関する交渉が精力的に続けられていました。4月19 日から21 日未明にかけて甘利経済財政・再生相とフロマン通商代表との間で日米間の最終的な合意に向けての閣僚折衝が行われ、さらに4月23 日から26 日にかけてTPP 全体に関する首席交渉官会議が開催されましたが、いずれも最終合意には至りませんでした。伝えられているところによると、日米交渉は、コメの輸入買い入れ枠と自動車部品の関税引下げのタイミングの問題が残っていると言われております。

農業問題に関しては、従来の争点であった牛肉および豚肉の関税引き下げ水準の問題およびセーフガード(WTO のセーフガードと区別するために従来はスナップ・バックと呼ばれていた輸入急増時に関税を元の水準への引き上げる措置)について、既に合意済みと見られていますが、新たな問題として、米国が、米国産米の輸入買い入れ枠を17 万5000 トンとするよう求めており、日本側は10 万トンの輸入枠に留め、さらにその対象を全てのTPP 加盟国とする案を提示していると言われております。

TPP 全体の交渉では、知的財産、国営企業等でいくつか争点が残されていますが、米国のTPA(Trade Partnership Authority、大統領に貿易交渉権限を与え、合意された協定は、一定期間内に修正なしで議会の議決にかけることとなる)法案の成立が不透明であるとして、交渉加盟各国は、最終決着に躊躇しているようです。しかし、TPA 法案は4月21 日に上院の財政委員会、翌22 日に下院の歳入委員会で議決され、本会議に上程される準備が整い、さらに最大の懸案とされていた日米間の合意が整えば、TPP 交渉は一気に最終交渉に向かう状況となりました。

このような状況の中で、米国公式訪問中の安倍総理は、4月28 日(現地時間)にワシントンD.C.での日米首脳会談を行った後、翌29 日(現地時間)には米国連邦議会上下両院合同会議において演説を行いました。
首脳会談後に発表された日米共同ビジョン声明では、「(TPP に関して)日米両国は、二国間の交渉において大きな進展があったことを歓迎するとともに、より広い協定の迅速かつ成功裡の妥結を達成するために、共に取り組むとのコミットメントを再確認する」とし、また議会での安倍総理の演説では「TPP には、単なる経済的利益を超えた、長期的な、安全保障上の大きな意義があること」を強調しつつ、「日米間の交渉は、出口がすぐそこに見えています」と述べており、日米間では合意が見えており、共同でTPP 交渉の妥結向かうことが確認されたようです。

米国議会のTAP 法案の取り扱いですが、貿易問題を所掌する上院財政委員、下院歳入委員の間では超党派で賛成が得られましたが、一般議員の中では、労働組合の支援が欠かせない民主党議員、オバマ政権との対立を明確にするべきであるとする共和党右派の議員に、反対が強く残っており、成立のための十分な票読みができていないと見られ、本会議上程の日程が決められない状況となっております。しかし、委員会議決も終わっていることから、反対の多い民主党議員をオバマ政権が説得することによって、5月中下旬頃には議決され、成立するのではないかとの観測が強くなっているようです。

今後のTPP の交渉は、5 月23 日からフィリピンで開催されるAPEC 首脳会議の際、25日から3日間、TPP 交渉の閣僚会議を開催することとなり、その際、合意に至るのではと観測されております。それに向かって、ルール問題を中心とする主席交渉官会議が15 日から25 日までグアムで開催されることとなり、日米間の交渉もそれに合わせて実施されるものと思われます。

<参考リンク>
日米共同ビジョン声明(外務省、日本語)
米国連邦議会上下両院合同会議における安倍総理大臣演説(外務省、日本語)
 

( 文責:西野 俊一郎)

 

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