『海外農林業情報』No.20

海外農林業情報 No.20(2013 年3月11日


USTR の年次報告から窺える今後のわが国のTPP 交渉参加問題

米国通商代表部(USTR)は、3月1日付で2013 年の貿易政策の課題と2012 年の年次報告を発表しました。この報告書では、日本のTPP 交渉参加を歓迎するとし、日本側がTPP交渉参加に向けた協議の意向を示した2012 年11 月の両国首脳会談以降、協議を進めてきたとしています。

その際、米国としては、2国間の長期間にわたる課題である米国産牛肉の輸入アクセス、自動車の輸出入アクセスおよび日本郵政と私企業間の金融・保険・急送便に関する不平等について、解決を求めてきたとしています。

このうち、牛肉の輸入については、これまでは、日本がBSE(牛海綿状脳症)対策として牛の月齢を20 ヵ月以下としてきたところを、本年2月1日からは30 ヵ月以下へと緩和しており、これをもって解決したとみられています。日本のTPP 交渉参加にも言及した日米共同声明(2月22 日)では、米側のセンシティブな問題として、自動車、保険が挙げられており、この2点が、米側として議会手続きに入るための事前折衝における主要な問題と考えられます。

自動車については、米国にとって最もセンシティブなもののひとつとされ、自動車業界としては、米国自動車の日本への輸出における基準認証、軽自動車の軽減税等を問題としていましたが、これらの早急な解決は難しく、米国の自動車業界への配慮として、日本車の輸入関税(乗用車2.5%、トラック25%)を当面特例扱いとして維持する方向で協議が進んでいると、ロイター等によって伝えられています。

日本郵政については、とくに保険の取り扱いが優遇措置ではないかと問題視されているようです。自動車の問題と同様、何らかの打開策を求める方向で、近いうちに協議結果を表明するのではと見られています。

いずれにせよ、上記問題の取り扱いおよび見通しについての2国間協議は進展していると見られます。その背景として、米国側は今月中に議会に日本の交渉参加について通告したいという意向を持っているということがあるようです。一方、ロイターによると、日本側も国内調整を進めたうえで、安倍首相は17 日に予定されている自民党定期大会までに交渉参加を正式表明したいということのようです。

なお、米国側の各業界関係者からは、日本が交渉に入ることで、TPP の自由化水準が下がるのではないか、また、交渉ルールを含めて内容が複雑になり、交渉が遅れるのではとの懸念の声も挙がっているようです。


参考リンク
2013 Trade Policy Agenda and 2012 Annual Report(USTR、英語)
米国産牛肉及び牛肉製品の輸入条件の見直し(外務省、日本語)
TPP、米自動車関税で譲歩(ロイター、日本語)


(文責:西野 俊一郎)

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