『海外農林業情報』No.38

海外農林業情報 No.38 (2014年12月17日

 

TPP交渉の現状について

これまで、11月のAPEC首脳会議を目指してTPPの大筋合意が目指されていましたが、結局、大きな進展が見られない状況の元で、再度12月7日から、12日にかけて首席交渉官ならびに担当者レベルでの会議が行われました。しかし、この会議においても依然として、大幅な前進が見られなかったという状況のようです。
いずれにせよ、米国での、オバマ政権の民主党が議会選挙において大敗を喫したという状況があり、かつ、日本側でも12月の衆議院総選挙ということもあって、全く動きが取れないという状況になっていたようです。

TPP交渉において、現在でも大きな問題点として残されているのは、SOE(国有企業)、原産地規則、IP(知的財産)、政府調達などの分野でのルールをめぐる対立があり、さらに、二国間の交渉において、日米間の農産物と自動車の交渉が大きな問題として残っており、また、金融を中心としたサービス等の問題も残されていると言われています。
今後のTPP交渉の進展については、米国内には、TPP合意前に貿易交渉権限付与のための法律(TPA)によって、大統領に交渉権限が与えられるべきであるという意見もあり、早期進展が懸念されており、しかも、再来年になれば米国の大統領選の年ということもあり、オバマ政権の動きが取れなくなるのではないかという見方もあり、来年後半にはTPPが合意されるべきで、TPAは来年早期に成立させる必要があるとの議論もあります。
日本国内においては、安倍政権は、経済回復が大きな課題となっており、通商交渉問題を最大の課題として積極的に動かすというような機運に欠けているきらいも見えます。いずれにせよ、日米間の交渉成立がTPP交渉における最大の課題とされていながら、あまり動きがとれず、急速な進展については疑問が呈せられています。

他方、米国とEUとの環大西洋貿易パートナシップ(TTIP)についても、EU側は、経済の停滞状況が依然として続いているという状況のもとで、担当委員の交代もあって、進展について意欲に欠けるという見方があります。

いずれにせよ、現在のオバマ政権においては、中東等政治調査問題に焦点が置かれており、通商問題が最優先課題という形になっていないことから、米国内でのTPPおよびTTIP等の進展をはかる盛り上がりに欠ける状況が続くのではないかと思われます。
 

<参考リンク>
TPP、知財分野難航続く、首席会合終了(日本経済新聞)


(文責:西野 俊一郎)

 

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