『海外農林業情報』No.41

海外農林業情報 No.41 (2015年4月3日


米国の農業見通し

米国農務省のAgricultural Outlook Forum(農業観測フォーラム)が2015年2月19-20日に開催され、米国における今年の農業見通しが発表されました。これは、今後毎月公表される農産物需給見通しの基本となるもので、今後は、この観測からどの程度離れたかに関心が集まるものです。この見通しは、2015-16年度の小麦、トウモロコシ、コメ、大豆、その他に関するもので、次のようにまとめられています。

先ず、小麦、トウモロコシ、大豆の全てを合計した作付面積は228.0百万エーカーと昨年より3.1百万減少すると見込まれ、とくにトウモロコシの作付面積が最も縮小すると見られています。これは、全世界の供給量が増加を続け、その価格が落ち続けていることから、生産者の収益低下が見込まれる状況下で植付けが進められていることに起因するものです。

2015年における小麦の栽培面積は、1.3百万エーカー低下し、55.5百万エーカーとなります。1月12日時点での、冬小麦の播種面積は、去年と比べ1.9百万エーカー低下しましたが、デュラム小麦を含めた春小麦の栽培(面積)が4%増加すると見込まれるからです。

トウモロコシの栽培面積は、89.0百万エーカーと見込まれ、前年より1.6百万エーカー縮小します。昨年はコーンベルト西部において激しい降雨があり、大豆価格が上昇していたことから、トウモロコシの栽培面積が減りましたが、さらに、今年に入り、2月前半の新穀先物価格が、前年より10%以上の低下となって、収益が下がると見込まれていることによるものです。

大豆の栽培面積は、83.5百万エーカーと見込まれ、昨年よりわずかの低下と見込まれます。今年3月初めの秋の新穀先物価格は、前年を上回っており、トウモロコシ、綿花より有利となっていることによります。

コメの栽培面積は、ほとんど変化しないと見込まれていますが、中短粒種の価格が有利と見られており、長粒種が減って中短粒種が増加するようです。


それぞれの作物別の生産は、次のとおりと見込まれています。小麦については、5%の増加と見込まれています。収量は、45.2ブッシェル/エーカーと見られ、昨年の43.7ブッシェル/エーカーより増加します。中部平原地帯において干ばつが引続き懸念されていますが、昨年の同時期と比べて状況ははるかに改善されています。他方、春小麦の状況は、ここ数年に比べると悪くなっています。しかし、2015年の冬小麦、デュラム小麦の生産量は、春小麦の減産を上回り、小麦全体としては、生産が増加すると見られています。

トウモロコシについて、2015年の生産量は、2014年の記録的な生産からは4%低下すると見られています。しかし、この生産見込みは、これまでで3番目に高い記録的な生産量で、13,595百万ブッシェルと推定されています。国内のトウモロコシ平均収量は、166.8ブッシェル/エーカーとみられ、2014年より4.2ブッシェルは低くなります。なお、昨年度の大きな収量は、夏の授粉期と穂孕み期に低温でストレスが掛からなかったことが要因と見られています。

コメについて、2015年の作付面積は、昨年からほとんど変化せず、2.90百万エーカーと見られています。また、通常の気候と作付スケジュールと仮定し、平均収量は、2014年と変わらず、7,569ポンド/エーカーと推定しています。しかし、2015年の全生産量は、前年より1%低下した218百万cwtと予想しています。

大豆について、生産量は3,800百万ブッシェルを見込んでおり、昨年より4%低くなります。平均収量は46.0ブッシェル/エーカーとみており、これは、良好な降雨と比較的温暖な気候で良い結果となった昨年の記録から1.8ブッシェル低くなります。収穫面積の減少と収量の低下にかかわらず、2015年は、昨年の記録を除いた、これまでで2番目に高いものになると見込まれています。


世界の農産物需給見通し

Agricultural Outlook Forumで発表された米国の見通しと合わせる形で、3月10日に、世界の農産物需給見通し(World Agricultural Supply and Demand Estimate(WASDE))が公表されています。その概要は以下のとおりです。

2014/15年度における全世界の小麦供給量は、わずかに低下するとみられます。主にブラジルの生産量低下によるものですが、ベラルーシの生産増が、これをわずかに相殺しています。小麦の消費量は、食料用小麦の利用が減ることでわずかに低下していますが、この減の一部には飼料用小麦の増加が相殺しています。

トウモロコシの生産量は1.6百万トン低下しました。南アフリカとベラルーシの生産が減少し、一方でアルゼンチンで増加しています。南アフリカの生産は2.0百万トン低下しましたが、乾燥と高温がトウモロコシの受粉期の2月に、とくに西部と中部の主生産地において発生したためです。ベラルーシのトウモロコシの生産は、収穫面積の縮小によって、0.1百万トン減少するとみられています。アルゼンチンのトウモロコシ生産量は、洪水による収穫面積低下がありましたが、授粉期と穂孕み期の良好な土壌水分によって収量増があり、0.5百万トン増加するとみられます。

コメの生産量は、30万トン増加しました。主にインド(50万トン)とスリランカ(15万トン)によって、タイ(35万トン)の低下を相殺しています。タイにおける2014/15年度のコメ生産は、0.35百万トン減少し、19.15百万トンと見込まれています。これは、現在発生している干ばつと中央地区(Central Region)における灌漑水の減少の結果、乾季の植付けが減少したためです。

2014/15年度の油糧種子生産量は、532.2百万トンと見られますが、国によって最近の生産状況に違いが見られます。大豆の生産量は315.1百万トンと見られ、ブラジルの生産量が94.5百万トン、アルゼンチンが56.0百万トン、パラグアイが8.5百万トンと見られています。その他の油糧種子については、オーストラリアの菜種生産が増加していますが、インドのヒマワリ種子の生産は低下し、パキスタンの綿実の生産は増加しています。
 

  <参考リンク>
Grain and Oilseeds Outlook (USDA、英語)
World Agricultural Supply and Demand Estimates Report(USDA、英語)   

( 文責:西野 俊一郎)

 

海外農林業情報』のバックナンバーは、こちらから。

刊行物一覧へは、こちらから。