『海外農林業情報』No.61

海外農林業情報 No.61 (2016年7月19日


米穀農務省による農産物需給見通し
 7月12日付で、米国農務省(USDA)より「世界の農産物の需給見通し」が発表されました。そのうち、小麦、粗粒穀物、油糧種子、コメについては次の通りとなっています。(本「需給見通し」には、このほか、砂糖、畜産物、綿花の見通しが報告されています。)

小麦:2016/17年度の米国の小麦供給量は、生産の増加と期首在庫のわずかな増加により、1億8000万ブッシェル(小麦の場合1ブッシェル=27.2kg)の増加が見込まれています。生産増は小麦ベルト全域で見られ、冬小麦は記録的な増加、春小麦は平均をわずかに上回る増加が見込まれます。2016/17年度の飼料等向け利用は、1億ブッシェル増の3億ブッシェルの増加が予想されていますが、これは小麦の供給が増加したこと、およびトウモロコシに比べ価格の競争力が増したことによるものです。
 2016/17年度の世界の小麦供給量は、生産増加と、期首在庫の150万トン増により、920万トン増の9億8300万トンと見込まれています。米国以外の生産量は100万トン増の270万トンと予想されていますが、これはロシアとウクライナでの天候が良好と見込まれるためです。アルジェリア、オーストラリア、カナダの生産量はそれぞれ50万トンの増加が見込まれ、世界全体の生産量は記録的な水準となる7億3850万トンと予想されています。
 2016/17年度の世界の小麦利用は、主に飼料利用の増加が見込まれることにより、1330万トン増の7億2930トンになると予想されます。このうち中国では550万トン、EUでは150万トンの増加が見込まれています。世界の食料・工業向け利用は、中国で100万トン増加が見込まれることから、170万トンの増加が見込まれています。

粗粒穀物:2016/17年度の米国のトウモロコシ生産量は、6月30日付の「作付見込み」における作付けと収穫面積の増加を反映し、1億1000万トン増加すると予想されます。
 2016/17年度の米国のトウモロコシ利用は3000万トンの増加が見込まれています。これは、輸出と種子利用の増加が、飼料等向け利用とエタノール向けの減少を上回ったことによるものです。
 2016/17年度のブラジルのトウモロコシ生産量については、収量減が見込まれることから、200万トンの減少が予想されています。カナダのトウモロコシ生産量も、最新の見通しにおいて乾燥気候による収量減が予想されていることから、130万トン減少すると見込まれます。
 2015/2016年のブラジルのトウモロコシ生産量は、ブラジル中央部の大部分における雨季の悪影響を確認した最新の政府統計を反映し、750万トン減少すると予想されています。一方、アルゼンチンのトウモロコシ生産量は100万トンの増加が予想されています。
 2016/17年度の世界の粗粒穀物の消費量は330万トン減少すると予想されますが、これは主に米国、ブラジル、中国、EU、韓国およびインドネシアにおけるトウモロコシの飼料利用の減少を反映したものです。

コメ:2016/17年度の米国のコメ供給量は、生産増により1200万cwt増の3億990万cwtになると予想されます(1 cwt=約45kg)。このうち長粒種の生産量は200cwt増、中粒種および短粒種の生産量は1200cwt増となっています。
 2016/17年度の世界のコメ供給量は、主に米国の供給増により、60万トン増加すると予想されます。

油糧種子:2016/17年度の米国の油糧種子生産量は、主に大豆の生産増により250万トン増の1億1540万トンになると予想されます。大豆の生産量は、収穫面積の拡大により、8000万トン増の38億8000万トンと見込まれています。
 2016/2017年の世界の油糧種子生産量は、米国の大豆生産状況を大きく反映して、260万トン増の5億3640万トン増と予想されています。米国以外の生産量は、ナタネ種子およびヒマワリ種子の生産増が綿実およびコプラの減少見通しを上回ったことから、10万トン増の4億2110万トンになると予想されます。カナダでは、主に作付面積の増加によりナタネ種子生産量の増加が見込まれています。一方EUでは、収穫面積と収量の減少により生産減が見込まれています。この収量減は主にフランスにおける6月の豪雨によるものです。このほか、カナダでは大豆生産量の増加が、米国では落花生生産量の増加が見込まれています。綿実の生産量については、インドとパキスタンで減少が見込まれており、米国とオーストラリアでの生産増を部分的に相殺しています。

 以上のとおり、2016/17年度のこれら各品目の世界需給は問題ないとされていますが、7月末から8月初旬にかけての天候が米国のトウモロコシ、大豆の収量に大きな影響を与える(トウモロコシの受粉、大豆の登熟)ことから、今年の乾燥気候を見越して、早くも投機資金が穀物市場に流入して、トウモロコシ、大豆のシカゴ先物取引価格が上昇を示しています。いわゆる天候相場となっており、今後の米国中西部の天候が、投機資金の動向と相まって、価格を大きく変動させる可能性があります。


<参考リンク>
World Agricultural Supply and Demand Estimates Report (WASDE)(USDA、英語)
シカゴ先物市場(CME)ウェブサイト(日本語)
 

( 文責:森 麻衣子)
 

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