『海外農林業情報No.64』

海外農林業情報 No.64 (2016年10月24日

FAOの世界食料需給見通し
 世界の穀物価格は、トウモロコシと小麦のシカゴ相場が低く推移しており、2017年は落ち着いた動きになると予想されます。一方、砂糖については、8月以降、世界最大の輸出国であるブラジルの生産量が伸び悩んでいることから、農産物先物市場の投機資金が集中し、価格が高騰しています。こうしたなか、FAO(国連食糧農業機関)は、10月6日付で世界の食料需給見通し「Food Outlook」を発表しました。本号ではこの中から、主要な穀物に関する概要をお知らせします。

小麦:2016/17年の小麦の国際市場では、記録的な生産と在庫の増加から、引き続き十分な供給があるものと予想されます。2016年の生産量は、インドとロシア、米国における生産増が主因となって、過去最高だった2015年を1.2%上回る7億4240万トンになるものと見込まれます。
2016/17年の小麦利用は、2015/16年度の推定値を2%(1500万トン)上回る7億3050万トンと予想されています。利用の大部分は、4億9800万トンと予想される食用が占めています。一方、家畜飼料向けの小麦利用は、低品質小麦の供給が多いことから、6.2%増の1億4600万トンになると見込まれています。

粗粒穀物:トウモロコシの生産量は、ブラジル、中国および南アフリカで急減が見込まれるものの、米国やアルゼンチンおよび多くの主要生産国で記録的な生産が予想されることから、生産量全体としては2016年は増加すると見込まれます。トウモロコシを含む粗粒穀物全体では、2016年に生産量の増加が予想されているものの、2016/17年度の全体的な需給見通しは前年度に比べれば若干締まるとみられます。とはいえ、輸出供給力が大きく輸入需要が弱いとの見通しから、粗粒穀物の国際価格は抑制気味に推移すると予想されています。
利用量に関しては、トウモロコシの増加が顕著で、米国と中国では前年に比べ国内の供給が増加し価格競争力があることから、家畜飼料向け利用が大幅に増えると予想されます。

コメ:2016年のコメのシーズンは、アジアにおいてモンスーン降雨が十分にあったことから、北半球では好調となってきています。その結果、2016年の世界のコメ生産見通しは、不作だった2015年を1.3%(630万トン)上回る4億9780万トンという記録的な水準に上方修正されました。コメの食用利用の拡大が2016年の生産見通しに対する利用量を押し上げていることから、2016/17年度の世界のコメの期末在庫は2年連続で減少し、1億6960万トンになると予想されます。

油糧種子:2015/16年度の市場ファンダメンタルズが緊迫していたのに比べ、2016/17年度の早期予想は、油かすおよび油脂について、比較的バランスの取れた需給状況となっています。
 予想されている大豆の生産増は、単収の記録的な増加が生産量を押し上げるとみられる米国に集中すると見込まれます。南米では、農家が競合作物に向かい大豆の作付けを減らすとみられることから、生産増加は限定的とみられます。中国とインドの生産量は、ここ数年の減少傾向をくつがえして増加すると予想されます。
 現時点での予想によれば、油・油かすの生産量および消費量は2016/17年に記録的な水準に達するものとみられます。

<参考リンク>
“Food Outlook, October 2016”(FAO、英語)


( 文責:森 麻衣子)
 

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