『海外農林業情報』No.30

海外農林業情報 No.30 (2014年5月2日

日米首脳会談の結果について

安倍晋三首相とオバマ米大統領との首脳会談は4月24 日午前に開催され、日米同盟の強化を確認するとともに、中国、北朝鮮、ウクライナ問題等についても、共通の立場を確認しています。しかしTPP に関しては、当初期待されていた大筋合意には至りませんでした。

首脳会議前の前進を目指し、24 日朝まで続けられた甘利経済再生担当相とフロマン米国通商代表とのTPP 交渉は、前進が見られず、両首脳の指示により首脳会談後も交渉が続けられることとなりました。しかし、その閣僚折衝も中断され、再度事務レベルの交渉が夜を徹して行われましたが、結局、閣僚折衝の再開もかなわず、合意に至らない状況となりました。その結果、首脳会議直後に発表される予定であった共同声明は、オバマ大統領の離日直前に発表されるという異例の展開となりました。

共同声明には、TPP に関し、「二国間の重要な課題について前進する道筋を特定した」とあり、問題が相当程度煮詰められ、かつ決着の方向性が見えたことがうかがえますが、合意は先送りとなっています。

直前まではこの首脳会議でTPP に関する大筋合意がなされるのではないかと言われ、交渉過程でも日本側の農産物5品目の取扱いの見通しが取り沙汰されていました。日本側の新聞各紙では、(1)コメ、麦、砂糖は例外扱い、(2)牛肉は関税を現行の38.5%から20%前後への引き下げ、(3)豚肉は、価格の高いものに関しては現行の4.3%からの引き下げ、価格の低いものに関しては差額関税制度の緩和、(4)酪農品は、特にチーズ関税の引き下げの方向で合意が進むのではないかと報じられました。しかし、結果として、豚肉の関税問題と自動車の規格・基準の問題で合意できなかったと伝えられています。

共同声明では、「両国は、TPP に関する二国間の重要な課題について前進する道筋を特定した。これは、TPP 交渉におけるキー・マイルストンを画し、より幅広い交渉への新たなモメンタムをもたらすことになる」としており、近々の合意の重要性を示唆しています。次の交渉は5月17 日、18 日に中国で開かれるAPEC の閣僚会議の機会ではないかといわれており、また首脳間で「道筋を特定した」とされていることもあり、首脳会談を待たずに、閣僚間で決着することもあると考えられます。

<参考リンク>

日米共同声明
 (1)外務省発表外務省
 (2)ホワイトハウス発表ホワイトハウス、英語)

進展も合意届かず TPP 日米協議を継続日本経済新聞Web 刊、無料ログインが必要)


(文責:西野俊一郎)

 

『海外農林業情報』のバックナンバーは、こちらから。

刊行物一覧へは、こちらから。