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『海外農林業情報』号外(2012.8.8)

『海外農林業情報』号外(2012 年8月8日

 

米国中部で続く干ばつの影響

米国中部では干ばつが続いており、USDA(米国農務省)はトウモロコシやダイズ等の生産に及ぼす影響についての警戒を強めています。USDAが公表するAgricultural Weather and Drought Updateは、拡大する干ばつにより秋の収穫は悲観的であり(7月12日付)、干ばつ地域の更なる拡大(20日付)を示唆しています。米国のトウモロコシ生産は、受粉限界時期である8月初めの雨量に大きく左右されることから、特に警戒されています。

干ばつの影響は収量予測にも反映されています。World Agricultural Supply and Demand Estimates(7月11日付)によると、2012/13年の米国のトウモロコシ収量の予測は、6月初期以来の作物状態の急な悪化および最新の気象データを反映して、1ac(エーカー/約0.41 ha)あたり20bu(ブッシェル)低い146bu(約3.71 t)まで落ち込み、また、ダイズ収量は先月から3.4bu減少し40.5bu/ac(約2.72 t/ha)と予想されています。今回の干ばつの影響が反映される次回の同予想報告(8月10日公表予定)が注目されます。

南米でのダイズの不作があった後でもあり、さらにFinancial Times(7月26日付)によると、インドではモンスーン時期の雨が少なくコメ・砂糖を中心に大きな影響を受け、ロシア、ウクライナ等も干ばつの影響で春コムギの生産状況が悪いようです。このような状況下に世界的な金融緩和もあって、市場への投機資金の流入が加速し、穀物相場が大きく動いています。特にコムギ価格は急上昇しており、2008年の価格高騰時を超え、今後は9ドル/buに届くのではと懸念されています。

また、このようなトウモロコシ、春コムギの価格高騰は、これらを飼料とする養豚、養鶏に影響を与え、消費者価格の高騰につながることが懸念されています。一方で、食肉・畜産業界等から米国環境保護庁(EPA)へ提出された、トウモロコシ由来エタノールを含む再生燃料使用義務量を定める再生可能燃料基準(RFS)の緩和要請に対し、Vilsack農務長官は、基準の緩和や免除措置に反対の意向を示しているようです。またヨーロッパでは、ロシア、ウクライナが2008年と同様に、輸出規制に動くのではないかとの懸念も生じています。

 

参考リンク
Agricultural Weather and Drought Update(USDA、 7月12日)

 

(文責:西野 俊一郎)

・2012.08.17 一部修正