海外農林業情報 No.17(2013年1月21日)
米国・EU間の貿易協定に関するワーキンググループ最終報告について
No.4およびNo.11でお知らせした米国・EU間の貿易協定のうち、「成長と雇用」に関するハイレベル・ワーキンググループは、昨年(2012年)12月に最終報告を提出する予定となっていましたが、遅れているようです。この理由は、米国の「財政の崖」、およびカーク米国通商代表部代表の辞任によって、米国政府の検討時間が不足したためと見られています。
なお、2月にはオバマ大統領の一般教書演説および欧州委員会の会合が予定されていることから、これらのイベント前後にこの最終報告が提出されるのではないかと見られています。特にオバマ大統領の一般教書演説の中でEU協定についての言及がある可能性があり、その内容が注目されています。
他方、今回の貿易協定では、特にSPS(衛生植物検疫措置の適用に関する協定)問題に関する両国間の手続きが大きく異なることが、交渉を難しくするのではないかと懸念されています。これらについては、米国(特に米国商工会議所)とEUの民間同士での話し合いが進められているとされ、今回の交渉の進め方はTPP等ほかの貿易協定の交渉においても参考になるのではないかと思われます。
エネルギー市場と農業の連動性
2012年7月に、OECDとFAOは「農業アウトルック2012?2021」を公表しました。この報告は、両組織の事務局が共同で作成し、毎年公表しているもので、今回の報告書内で示された問題の多くは、同年6月のG20ロスカボス・サミットにおいても強調されています。
今回の報告は2021年に向けての見通しを示したものとされていますが、注目されるのは、エネルギー市場と農業との関係です。具体的には、分析の結果、石油価格と農業生産が連動性を強めており、また、石油価格が2010年に用いられた予測値よりも上昇しており、バイオ燃料や関連農産物の生産刺激となるとともに、農産物価格が高くなる要因となっていることが明らかにされています。
例えば、原油価格が25%低下した場合の農産物価格の低下は、バイオエタノールで約14%、原料となる肥料で約12%と価格の下がり方が大きく、次いで、代替エネルギーとして利用される油糧種子や粗粒穀物で約5%、バイオディーゼルや小麦で約4%と推定されています。他方、コメや牛肉では約2%とされ、影響が少ないようです。原油価格が25%増加した場合でも同様の傾向が見られますが、バイオディーゼルは上昇幅が大きく、10%と見積もられています(図1)。
参考リンク
・OECD-FAO Agricultural Outlook 2012-2021
オンライン閲覧用(英語)
概要(「世界の農林水産 No.829」、日本語)
・Crude oil prices affect agricultural commodity and biofuels markets (データ、英語)
(文責:西野 俊一郎)
『海外農林業情報』No.17
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