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『海外農林業情報』No.56

海外農林業情報 No.56 (2016年3月10日


米国内でのTPP批准に向けた動きとTTIP交渉の状況

米国内では大統領選挙に向けて政治的な動きが激しく、3月1日のスーパーチューズデーの結果、共和党ではトランプ候補、民主党ではクリントン候補がリードしているとされています。TPPに関しては、両者ともに反対という立場であり、特にトランプ候補は全面的に反対と表明しています。クリントン候補も、労働組合の支援を求める立場から、自分の貿易政策の原則である雇用の増大という点から見て、現在のTPPは不十分であるという批判をしているようです。

しかしながら、オバマ大統領は、TPPにはすでに署名しており、その関連法案を早急に議会に提出するとしており、今後のTPPの取扱いは議会の任務となります。議会では、共和党議員に貿易自由化の推進派が多く、一方で民主党は組合の影響が強いため反対が多いとされていますが、今年いっぱい任期のある現在の議会では、共和党が過半数を占めていることもあり、オバマ政権は楽観的に見ているようです。

一方、TPPとあわせて、オバマ政権としては、世界の新しい貿易ルール策定のリーダーシップをとる上で、TTIPを進めることが重要と見ているようです。そのTTIPについては、米国とEUとの交渉会議がブリュッセルで2月22日から26日に開催され、結果についてUSTRからステートメント(その中ではT-TIPと略称しています)が発表されました。
TTIPについては、米・EUとも97%の関税撤廃スケジュールが交換されておりますが、EU側は、牛肉、乳製品、肉類を中心に、例外扱いを求めているようです。その他の市場アクセスに関して、サービスと政府調達については、まだスケジュールの交換には至っていないようです。特に、政府調達に関して、米国の州政府の取り扱いが決まらないようです。

ルールについては、TPPで合意された各種ルールが基本となるようですが、農業分野では、遺伝子組換え農産物の取扱い、ホルモン肥育の肉類、鶏肉の特定化学物質による洗浄の問題および地理的表示(GI)に問題があると言われています。また、SPSに関しては、早期通報、協議システムを導入する方向のようです。さらに、TTIPの特長として、TTPにはない、規格の相互認証と新規規格の設定に関するルール作りが進められているようです。

いずれにせよ複雑な問題が多々あり、オバマ政権側としては今年中の合意を目指しているようですが、EU側だけでなく、米国内にも今年中は無理ではないかと言う意見があり、米国の次期政権の下での交渉となるのではないかと思われます。

<参考リンク>
U.S. Press Statement at the Close of the T-TIP Round in Brussels(USTR、英語)
 

( 文責:西野 俊一郎)

 

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