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『海外農林業情報』No.71

海外農林業情報 No.71 (2017年5月23日


「TPP11」の発足について
5月21日、米国を除くTPP参加11ヵ国による閣僚会合が開催され、「TPP11」の発足に向けた協議が行われました。TPP11については、脱退した米国が「異議を唱えることにはならない」(ロス商務長官)などと容認する姿勢を見せたことからその構想が進み、5月2日にカナダで首席交渉官会合が開かれたところです。
今回の閣僚会合では、TPP11に積極的な立場である日本、オーストラリア、ニュージーランドが交渉の進展に向け努力しましたが、米国への市場アクセスの拡大を前提にサービス・投資分野で大きな譲歩を示していたベトナムとマレーシアは、TPP11に消極的な姿勢を示したようです。また、カナダとメキシコが北米自由貿易協定(NAFTA)の再交渉の関係で、またペルーやチリも、米州全体との関係で消極的な姿勢を見せたようです。
こうしたことから、各国の立場の相違を埋めることができず、今回の閣僚会合は「閣僚はTPPの利益を実現する価値について合意し、総合的な質の高いこの協定に関し、原署名国の加盟方法を含む早期発効に向けての選択肢の検討を開始することに合意した。また、閣僚は、この検討の準備を貿易担当官に11月のベトナムでのAPEC経済閣僚会議前に終えるよう指示した」などの共同声明を採択して終了しました。なお、声明で示された「選択肢」を検討する首席交渉官会合は7月に行われる予定となっています。

「RCEP」について
さらに、アセアン諸国、日本、中国、韓国、インド、オーストラリア、ニュージーランドの間で別途交渉されているRCEP(東アジア地域包括的経済連携協定)の閣僚会議も、5月22日に同じくベトナムのハノイで開催され、共同声明が出されました。この協定は、米国抜きのTPPに代わるアジアでの経済自由化に向けたものとして注目されており、共同声明では、年内の交渉妥結を目標とすることが合意されましたが、現在の交渉状況では、TPPに比して、関税の引き下げやサービス、投資の自由化の水準も低く、さらにルールの分野でも消極的な国が多く、必ずしも明るい見通しとはなっていないようです。


<参考リンク>
TPP早期発効へ声明(5/22、日本経済新聞)
'TPP 11' ministers pledge to revive stalled agreement(5/21、Nikkei Asain Review)
※閣僚会合の声明全文を掲載
 

   ( 文責:森 麻衣子)

 

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海外農林業情報 No.67 (2016年12月22日)


日EU間のEPAの動き
日EU間の経済連携協定(Economic Partnership Agreement, EPA)は、2013年3月の首脳間合意により開始されました。これは、関税撤廃や投資ルールの整備等を通じて貿易・投資を活性化することを目指して、日本にとってはTPPと並ぶ、EUにとっては米国と交渉中のTTIPと並ぶ「メガFTA」の一つとなることを目指したものです。

交渉は、2014年4月には物品の関税引下げオファーが、さらに7月には投資、サービス分野の自由化のオファーが交換され、本格化されました。しかしながら、交渉分野としても、物品、サービス、知的所有権、政府調達、投資ルール、非関税障壁ということで、TPPより範囲が限られており、また、日本側としては、TPP交渉が先行しており、この枠を出ない対応にならざるを得ない状況となっていたと思われます。また、交渉は、交渉官レベルで積み重ねられており、双方とも具体的な内容を公表しないということで不透明なところがありますが、EU側の関心は、チーズ、豚肉、ワインの市場アクセス改善と地理的表示(GI)の保護、地方公共団体・鉄道の調達(政府調達)の拡大、自動車、加工食品、医薬品等の基準認証に関する非関税措置、日本側の関心は、EUの工業品の関税撤廃、特に自動車の10%関税、電子機器の14%関税の撤廃、日本側の投資企業に対する欧州側の規制問題等で、これらに集中して交渉が行われたようです。

双方は、2016年中の合意を目指していましたが、12月12日から16日までの交渉会議で終着点が見出せず、再度来年1月に会合を持つこととなったと発表されました。EU側の記者会見によれば、残る重要問題は、日本のチーズ、豚肉の市場アクセスとEUの工業品の関税だったようです。EU側は、日本のチーズ、豚肉問題の対応によって自動車、電子機器の関税引き下げに応ずる準備はあるとのことで、また、EU側交渉官によれば、豚肉では、「前進があった」とされています。双方とも、グローバリゼーションのモメンタムを維持するためにも、何とか米国のトランプ大統領の就任式(1月20日)前に決着を図りたい意向があるようで、1月の交渉、その直後にでも閣僚交渉を行っていく構えのようです。もし、この機会を失するとフランス、ドイツの選挙、3月には、英国離脱の通告が予想されているため、これも漂流せざるを得なくなるのではないかと言われています。

<参考リンク>
経済連携協定(EPA)/自由貿易協定(FTA)(外務省ホームページ)
年内の大枠合意難しく(日本経済新聞、12月17日朝刊)
日欧EPAに時間の壁(日本経済新聞、12月18日朝刊)
日欧EPA年内大枠合意見送り(日本農業新聞、12月18日)

 

( 文責:森 麻衣子)

 

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