海外農林業情報 No.28(2014年4月16日)
米国およびEUの首脳会議について
米国・EU間の首脳会議が、3月26日にベルギー(ブリュッセル)で開催されました。米国側からはオバマ大統領、EU側からはファンロンパイ大統領およびバローゾ欧州委員長が出席したこの会議では、両者が直面する様々な問題が取り上げられて議論され、最後に共同声明が発出されました。当初は、金融安定化の問題と並んで「環大西洋貿易投資パートナーシップ (Trans-Atlantic Trade and Investment Partnership, TTIP)」の前進が期待されていましたが、昨年末から急展開したウクライナの問題が中心とならざるを得なかったようです。
共同声明でも、まずウクライナ問題が大きく取り上げられ、次いで金融安定性の問題となっており、TTIPは影が薄く、言及は33パラグラフ中1パラグラフに留まっています。
TTIPの内容については、2013年2月に公開されたハイレベルワーキンググループでの最終報告に記載されたゴールを目指すとし、(1)ものとサービス、(2)投資、(3)政府調達それぞれのアクセスの拡大および(4)規則の共通性を求めるとの抽象的な言及に留まっています。なお、当初米国側が求めていた関税の完全撤廃については、EU加盟国からの反対が強く、言及できなくなかったようです。
(4)の規則の共通性に関しては、市民社会からの厳しい批判に応え、健康、安全、労働、環境について、厳しい条件のうえでの共通性を求める方向となっています。また、米国側は規則作成にあたっての事前協議制度を求めていますが、EU側の、域内規則制定の手続きを変更することはできないとの主張から、共同声明では規則制定過程についての透明性確保に努めるとの言及に留まっているようです。
以上のように、貿易問題に関するオバマ政権の積極的姿勢が見られなかったということもあり、TTP交渉も停滞するのではないかとの懸念が生じているようです。
<参考リンク>
・EU-US Summit: Joint Statement (米国ホワイトハウス、英語)
(文責:西野俊一郎)
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