『世界食料農業白書2020年報告 要約版:農業分野の水問題を克服するには』
2021年3月、22×16cm、26p
FAOの報告書『The State of Food and Agriculture 2020』の要約版を翻訳・刊行しました。
水不足の深刻化が食料安全保障と栄養を脅かしている今、農業における水利用をより 持続可能で公平なものにするための行動が急がれています。今なお世界最大の淡水利用セク ターである灌漑農業では、淡水資源の需要増大やそれに伴う水争奪の激化により、淡 水の欠乏がますます深刻な問題となっています。その一方で、天水農業も、気候変動に よる降水パターンの不安定化に直面しています。こうした傾向は、水利用者間の争いを 激化させ、特に小規模農家や農村貧困層など立場の弱い人々の水アクセスの不平等を一段と悪化させかねません。
本書は、灌漑農業における「水欠乏」と天水農業におけ る「水不足」の規模や、これらの影響下にある人口の最新の推定値を示しています。 明らかになったのは、国家間で水制約の状況に大きな隔たりがあるだけでなく、国内 地域間でも大幅な空間的ばらつきがみられるという事実です。こうしたエビデンス は、各国が水問題の性格や程度はもとより、農業生産システムのタイプや国の発展レベル、政治体制といったさまざまなファクターに応じて適切な政策や介入策をいかに 決定していくかといった論議に役立てることができます。こうした考察を踏まえ、本白書は、農業における水制約の打開と、効率的で持続可能かつ公平な水アクセスの確保 に向けて、各国が政策や介入策を適切に優先づけていくための手引きを提供しています。