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『海外農林業情報』No.27

海外農林業情報 No.27(2014年2月4日

米国ファストトラック法案議会提出

<与野党による共同案>
政府側が議会に要請していた、大統領に貿易促進権限(TPA)を付与する法律(いわゆるファストトラック法)が、ボーカス上院財務委員長(民主党、上院は民主党多数で全委員長が民主党)、ハッチ上院野党財務委員会理事(共和党)およびキャンプ下院歳入歳出委員長(共和党、下院は共和党が多数で全委員長が民主党)の連名で、1月9日上下両院に提出されました。この両委員会は、上下両院で通商問題を所掌する委員会となっており、その委員長同士が、しかも与野党共同で提案したものです。また、大部の法案であることから上下院の両委員会の事務局で十分に練り上げられたものと考えられており、多少の修正があってもこの法律の通過が確実視されています。
正式の法案名は、「Bipartisan Congressional Trade Priorities Act of 2014(2014年超党派連邦議会通商優先事項法;仮訳)」です。内容は、(1)大統領にTPAを付与、(2)議会としての交渉優先事項を列挙、(3)議会との協議手続き規定から成っています。

<これまでの経緯>
米国は、合衆国設立の際の各州協議で、外交権限を連邦政府に一元的に付与し、条約は上院の承認(のみ)で批准されること(下院の関与がない)としました(合衆国憲法2章2条2項)。他方、貿易問題は、関税収入との関係で、議会の所管事項とされました(同1章3条3項)。このため、行政府のみで交渉した貿易に関する条約は、条約の内容を議会によって国内法に移し替える必要があります。例えばWTOに移行する前のGATTがそのような位置づけでした。議会の承認を得られずに行政協定となったGATTでの合意事項は、国内法で実行が担保されなければなりませんでした。このような米国行政府の立場に対し、ウルグアイ・ラウンドの際、EUが疑義を呈したことで、米国行政府は初めて議会に大統領へのTPAを求め、これが認められました。これが、ファストトラック権限(Fast Track Negotiating Authority)と称せられました。政府は交渉に入る3ヵ月前までに議会に通報し、議会は、成立した条約を優先して審議し、賛否のみを決する(修正はできない)こととなります。この簡素化された手続きがファストトラックと言われる所以です。また、議会が、3ヵ月以内に採決に至らなかった場合は「承認」となります。1992年の「北米自由貿易協定(NAFTA)」が、これによって承認された一例目に当たります。また、ウルグアイ・ラウンドでの合意も、この手続きにより、「WTO協定」として承認されました。
その後、その交渉権限は順次更新され、2002年には、WTOのドーハ・ラウンドのために、後継法である「貿易促進法(Trade Promotion Act, これもTPAと略されます)」が制定されました。しかし、ラウンドの停滞もあり、この法律は2007年7月に期限切れとなりました。期限切れ後に合意された米韓FTAでは、議会の反対にあい、一部再交渉に至ったこともあります。オバマ政権は、TPPを提唱するに当たり、早期にTPA法を制定するよう議会側に求めると同時に、TPA法の失効後にもかかわらず、TPPにおいても「90日前通報ルール」を順守し、TPP交渉への新規加盟にも同じルールを適用してきました。さらに、欧州との「環大西洋貿易投資パートナーシップ (Trans-Atlantic Trade and Investment Partnership, TTIP)」に関しても、このルールを適用しています。

<TPAの概要>
貿易促進法の後継法に当たる今回の法案も、基本は前法と同じですが、期限を4年とし(3年以内の延長可)、交渉優先事項に為替問題等新たなものを加え、さらには、両院交渉顧問グループ(Advisory Group on Negotiations)を設置する等、議会側との協議を緊密化させていることが主な違いです。また、提案説明でTPP、TTIP(対欧州)、サービス交渉(TISA)およびWTOの各種交渉に言及し、これらの交渉が、この法律によるものであることを確認しています。
初めて交渉優先事項に加えられた為替問題は、相手国に対し為替介入の回避を求めるものです。しかし、一部議員には、この条項が具体性に欠け不十分であるとして修正案提案の動きがあるようです。また、その他、知的所有権保護、労働・環境保護、政府保有企業(State-Owned Enterprises, SOEs)行動規制、農業のルール、もの、サービスの貿易等15分野に関し、これまでの米国の主張に沿うような形で、抽象的ではありますが細部にわたって言及されています。
農業に関しては、交渉優先事項の3分の1以上を占める21細目に及んでおり、重視の姿勢が窺えます。特に、関税については、高関税の品目に重点を置き、ある程度の調整期間を置きつつ削減ないし撤廃することとしており、「撤廃」のみという形にはなっていません。また検疫衛生規則(SPS)に関しては、科学的根拠に基づくことを求めていますが、本件にかかる紛争処理は必ずしも一般貿易ルールによることとはしていないようです。また、地理的表示(Geographical Indication, GI)に関しては、不適切に利用されかねない規制を廃止することを求めており、これらは、EUとの交渉をも念頭に置いていることを窺わせます。

<参考リンク>
提出された法案について(米国議会上院、英語、サイト右側に法案の全文リンク有り)

(文責:西野俊一郎)

 

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