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『海外農林業情報』No.44

海外農林業情報 No.44 (2015年6月19日)


TPPとTPAをめぐる米国議会の動き
Trans - Pacific Partnership (TPP) 協定の交渉が、米国議会のTrade Promotion Authority (TPA) 法の審議の遅れで、停滞した状況にあります。当初予定されていた5月の閣僚会議が延期となっており、今月いっぱいも開催は無理ではないかと言われ、夏前に大筋合意に至るか否かが微妙な状況となっています。

米国においては、建国の際の憲法上の事情 注1)で、関税の変更を中心とした貿易交渉の権限が連邦政府には与えられていない状況にあります。したがって、連邦政府が交渉した貿易協定は、議会での議論を経てはじめて条約として認められることとなり、議会は不承認とすることもその協定の中身の変更を行って承認することも出来ます。有名な例は、GATTです。当初、ブレトンウッズ体制の貿易面の協定として、ITO (International Trade Organization) 条約が合意されましたが 注2)、米国は議会の承認を得られず、この中の関税と貿易に関する一般協定 (General Agreement on Tariff and Trade, GATT) のみを行政協定とし、その内容に合わせて国内の関税等の関連法を修正するという形をとりました。もちろん国内法とGATT協定に相異が出た時は国内法が優先します。典型的な例は、アンチ・ダンピング規制でした。米国は、GATTに反したダンピング手続きをとり、しばしば他国から非難されていました。このような状況でしたので、GATTにおける逐次のラウンド交渉では、米国政府は、議会スタッフの貿易会合への出席を求めて、議会と密接に連携をして対応していました。しかし、このような議会の関与は他国からの批判の的となり、行政府は、議会から貿易交渉権限を受け、それによって合意された協定は議会としては修正できないこととする貿易促進権限 (TPA) 法を求めることとなりました。この法律は、議会の手続き法として、その協定を早期審議するという形で構成され、それがいわゆるファスト・トラック (Fast Track) と呼ばれる所以です。

ウルグアイ・ラウンドは、これによって大胆に貿易関連の諸規定を広く交渉でき、これらを一括して、しかも正式の事務局をも設けるという形で取りまとめることが出来ました。これが現在のWTO (World Trade Organization) 協定となっており、この中にGATT等物品に関する協定、サービス協定、貿易関連知的財産協定、貿易関連投資協定等が含まれています。米国議会も、これを無修正で承認していますので、米国もかつてのGATTのような状況が解消されています。また、連邦政府としても、この権限法で、各種の複数国間又は2国間の自由貿易協定 (Free Trade Agreement, FTA) を積極的に進めることが出来る状況となりました。しかし、このTPA法は、常に時限立法となっており、現在は前の法律が切れた状況となっています。このような状況の下で、TPP交渉が行われており、参加各国は、米国行政府がこの交渉権限を議会から与えられない限り、自国のポジションが不安定となるとして、最終合意を躊躇する状況にあります。

オバマ政権は、WTOのドーハ・ラウンドの停滞を受け、貿易の国際ルールをさらに拡充するべく、太平洋地域でTPPを、またヨーロッパとの間でTTIP (Trans-Atlantic Trade and Investment Partnership) を提唱しており、この面で世界のリーダーシップを取るべく努力しています。しかし、米国議会の中では、野党共和党が上下両院とも過半数を占めており、しかも共和党の自由貿易支持に対して、民主党は、労働組合の影響を受けて保護貿易的になる傾向にあります。共和党の中には、保守派を中心に、オバマ政権に対決的であるべきとの意見もあり、一方で、民主党の中では民主党の政権を守るべきであるとの動きもあり、また、米国議会は、党議拘束の制度はなく、議員個人の判断で賛否を投票する形になっており、TPA法案の議会投票が非常に読みにくい状況となっていました。

このような状況下、上院では、TPA法案と貿易自由化によって影響を受けた労働者に支援を行うTAA (Trade Adjustment Assistance) 法を一体として扱うという方向で、与野党の指導者間で合意され、投票に付された結果、5月22日に可決され、これが下院の審議に回されました。しかし、下院では、6月12日に、この法案の中身をTPA部分とTAA部分に分けて別々に採決し、TPA部分は賛成219、反対211とかろうじて可決されましたが、TAA部分は126対302で否決されることとなりました。TAAは、労働者支援法で、民主党の一部を賛成に持っていく事を目的とされたものですが、その中で、支援のための予算は医療費支出予算から捻出する 注3)となっていることに民主党の多数が反発したための結果であると伝えられています。

しかし、下院議長 (共和党) は、TAA部分を切り離した単独のTPA法を作成し、下院の採決に掛け、6月18日に可決されました。上院の議決した法案とは異なるものが下院で成立したこととなりましたが、この法案が上院に送られ、今後の取り扱いは上院にゆだねられます。上院でこの下院案が可決されれば、TPA法案は成立し、大統領の署名を待つこととなります。しかし、上院では、TPA・TAA一体法案もかろうじて可決された経緯もあり、単独法が可決されるか否か微妙な状況だと思われます (上院では民主党議員の賛成を得るためにTAA法を一体とした経緯があります)。また同時に、下院では、民主党首脳部が、労働者を支援するTAAに民主党の議員が反対するのはおかしいとして、何らかの文言修正による妥協案を求め、それをもって再度一体法のTAA部分を採決に付するという方向で調整を続けているようです。その方向で、下院の議決がなされ、可決となれば、上院の元の法案の議決が有効となり、TPA・TAA法案が成立することとなります。しかし、その時期は相当遅れるとの予想が伝えられています。今後は、この二つの方向で進んで行きますが、いずれにせよ多数党の共和党としては、オバマ大統領と民主党首脳の指導上の問題に持ち込んだ状況のようです(ペロシ民主党下院院内総務(院内のリーダー)の消極的な態度が問題であるとしているようです)。

注1) 米国独立の際、各州の権限が強く、連邦政府には明示された権限のみしか与えられませんでした。例えば、商務に関しては州際交易のみ、道路に関しては州間 (Inter-state) 道路のみというように連邦政府の権限が限定され、連邦予算も、日本と異なり、政府提出予算の諾否のみではなく、原則として議会が決めることとなっています。外交権限は、連邦政府に包括的に与えられていますが、貿易に関しては、特に関税収入が連邦予算の一部となっていることから、また、独立時の各州の利害 (北部は小農・工業中心、南部は大農中心) が錯綜していたことから、憲法上連邦議会の決定事項とされています。

注2) ブレトンウッズ体制として、通貨・金融関係ではIMF (International Monetary Fund) 協定、貿易関係ではITOが合意され、車の両輪となることとされていました。

注3) 米国では、政府の財政赤字の累積が大きくなっており、これの解消のために財政再建法が定められています。この法律により、主な支出項目についての大枠が定められており、新たな大きな支出予算を伴う措置に関しては、財源を明記することとなっています。もちろん、予算は議会が決めることとなっていますので、これは議会をも拘束します。

<参考リンク>
米、週前半にも再採決(日本経済新聞、日本語)


( 文責:西野 俊一郎)

 

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