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『海外農林業情報』No.50

海外農林業情報 No.50 (2015年10月8日
 

TPP交渉の大筋合意について
5年半にわたって続けられてきたTPP(環太平洋パートナーシップ)協定の交渉ですが、9月30日から、米国のアトランタで、最後の決着を付けるべく閣僚会議が開催されました。当初2日間の予定が4日も延長され、5日早朝に大筋合意に至ったとされています。

中心課題は、7月のハワイ・マウイ島会議で合意には至らなかった知的所有権(IP)分野における生物製剤のデータ保護期間、乳製品の日・米・加の輸入枠、自動車の原産地規則でした。

生物製剤のデータ保護期間については、12年と主張する米国に対し、そのデータが公表されて初めてジェネリック医薬品の開発が可能となるものであるため、チリ、ペルーなどの開発途上国に加え、公的健康保険の負担増になる懸念からオーストラリアとニュージーランドが従来の5年に固執しました。妥協案として、5年、更にその後に、ジェネリック医薬品の申請に対して、3年以上の安全性検証期間を設けることで合意されました。米国側としては、保護期間が8年となっていると主張できる状況となっています。

この生物製剤の決着を踏まえて、ニュージーランドの乳製品に関する輸入枠拡大の要求が緩和され、それぞれの二国間の話し合いで解決されました。日本との関係では、脱脂粉乳、バターについて、生乳換算で当初6万トン、6年目以降7万トンのTPP諸国枠を設ける等の内容となっています。

自動車原産地規則については、日米間で4割以上(TPP域内での部品の構成率)ということで合意しましたが、メキシコおよびカナダが、NAFTA(北米自由貿易協定)で6割となっているとして反対し、最終的に55%、一部重要部品を除いた場合は45%とすることが出来るという選択肢を設けることで決着が付けられました(米国は45%を選択することになるのだと思われます)。

今回、大筋合意されたTPP協定は、オーストラリア、ブルネイ、カナダ、チリ、日本、マレーシア、メキシコ、ニュージーランド、ペルー、シンガポール、米国、ベトナムの12ヵ国で交渉されたものですが、これから、各国で国内での批准手続きに入り、批准書の寄託を行うこととなります。すべての国が寄託したのち60日後に協定が発効することとなります。また、2年以内にすべての国での手続きが終わらなかった場合は、12ヵ国の合計GDPの85%を占める6ヵ国の批准書寄託後60日で発効することとなっております。GDP85%の要件は、日米で約80%ですので、日米を含む6ヵ国と解されます。10月19日に大統領選挙を迎えるカナダの野党側がTPPに批判的なことから、これに対する備えかとも言われています。

協定は、物品及びサービスの市場アクセスに関しては、それぞれ関税その他の輸入障壁の原則としての撤廃、サービス市場の原則自由を規定しつつ、それぞれの二国間交渉を踏まえ、物品に関しては国ごとの譲許表を作成し、またサービスに関しては国ごとの例外分野のリスト(ネガティブ・リスト。WTO上はポジティブリストとなっています)を作成するという方式を取りつつ、これらを含めて30にわたるルール設定を行っています。なお、各国の関税撤廃譲許率は非常に高く、WTO上の関税同盟協定基準を超えており、日本も95%となっています。

TPP協定で設定されている30のルールは、物品の貿易、原産地規則、一般的セーフガード、衛生植物検疫措置(SPS)、貿易の技術的障害(TBT)、投資、金融、電気通信を含むサービス、ビジネス関係者の一時的入国、電子商取引、知的財産(IP)、労働、環境、政府調達、国有企業、紛争解決、例外規定等に分かれており、WTOを含む過去の貿易協定の伝統的な分野でそれを越えるとともに、新たな貿易上の課題に対応しようとしております。これらの中では、インターネットとデジタル経済、国有企業の取り扱い、中小企業による貿易協定活用の推進等が含まれております。特に、電子商取引のルールを定め、それに伴う急送貨物の取り扱い(6時間以内の通関)を貿易円滑化ルールの中で定めています。

この中で、特に争点となったのは、原産地規則、投資、知的財産、政府調達、労働、国有企業等の分野でした。
原産地規則は、TPP協定の譲許関税を受けるための条件になるもので、その原産地証明作成負担の軽減等それぞれの国の原産地規則の統一ルールを定めるとともに、繊維製品・自動車での例外取扱いが認められるようになっています。
投資に関しては、投資企業に対する現地調達、技術移転等の特定措置の要求の原則禁止、正当な補償を伴わない収容の禁止等の規定のほか、投資家と当該国の間の直接的な紛争処理(ISDS)の手続きを設けています。なお、投資の自由化に関しては、国別に投資比率の例外等がリスト・アップされています。
知的財産に関しては、著作権等の保護期間を従来の50年原則から、70年に延長しており、新薬に関するデータ保護の期間を原則5年、試験審査3年の合計8年としています。さらに、地理的表示(GI)の保護または認定のルールを定めています。
政府調達に関しては、一定額以上の調達についての公開入札を原則としており、その範囲も地方政府を含むように拡大することとして、各国の約束内容が列挙されています。米国、オーストラリア、カナダ、シンガポールではこれまでの国際約束以上の対象機関が挙げられており、オーストラリア、チリ、ペルーは調達基準額を引き下げております。マレーシアのマレー人優先に関しては、例外となっています。

労働に関しては、結社の自由、強制労働・児童労働の廃止、雇用差別の撤廃等1998年のILO宣言の法律等による採用を原則として定めていますが、ベトナムの取り扱いが例外となっています。
国有企業(SOE)に関しては、物品、サービスの売買を行う場合は、商業的考慮に従って行動すること、国有企業への非商業的援助(有利な金利での貸付け等)により他の国の利益に影響を及ぼさないこと等の原則が定められていますが、各国は、特定の国有企業に関し適用しないことを国別付属書で留保できることとなっています。我が国の場合は、地方政府の所有・支配する企業に関して留保しています。

なお、特に我が国の農林水産業分野の取扱いは別添のとおりですが、物品の市場アクセスのルールの中で、輸出税の新設・維持の禁止、食料の輸出制限の適用期間を6ヵ月以内とするということ、SPS措置の中で、この協定独自の技術的協議が定められていることが、また、環境分野での漁業の禁止補助金が、濫獲魚類資源に悪影響を及ぼすものと違法操業漁船に対するものに限定されている点が注目されます。


<参考リンク>
TPP協定交渉の大筋合意について(内閣官房 TPP対策本部)
TPP、「6ヵ国・GDP85%」以上で発効可能に(日本経済新聞電子版、無料会員登録が必要)

 

(参考)TPPにおける日本の農林水産物輸入アクセス

1.コメ
現在のコメ輸入に関しては、国家貿易品目としつつ、341円/?の関税が課せられております。しかし、この関税では、国内産のコメの価格と比較して、輸入はほとんど考えられない水準となっておりますが、WTO上は、ミニマム・アクセス(最低輸入)を約しており、この数量で政府が輸入する体制となっております。
ミニマム・アクセスは、年77万トンとなっておりますが、約10万トンのSBS(Simultaneous Buying and Selling、同時売買)制度による枠設定のものを除き、政府が備蓄用に直接買い付けております。この備蓄用は、政府の輸入ですので、単なる枠設定ではなく、買い入れ義務と解され、政府は、毎年買い入れの上、保管し、一定期間経過後、直接消費用に向かない状態となったところで、加工用、飼料用として入札制度で売り渡しております(かつて、援助用に供せられたこともあります)。また、その価格は、輸入価格より低くなることが考えられ、損失は政府負担となります。SBSに関しては、毎年10万トンの枠を設け、輸入業者と国内需要者から輸入価格と国内買入価格を同時に共同で入札させ、その差額の大きいものから数量割当てが行われる形をとり、政府が瞬間タッチで差額(マーク・アップと言われます)を徴収することとなります。この枠は、ほぼ消化されていますが、実輸入に至らなくなる場合があります(例えば2013年度は4万トン強の輸入)。
今回のTPP協定では、国家貿易制度及び現行の関税はそのままとし、SBS枠に国別枠を設け、米国枠として、当初3年は5万トン、その後漸増し、13年目以降7万トン、オーストラリア枠として、当初3年は6000トン、13年目以降8400トンとすることとなりました。これとは別に、政府の備蓄用の一般輸入枠に、中粒種(米国産が中心となります)の加工用SBS枠6万トンを設けることとなりました。

2.麦
現在の関税は、小麦55円/?、大麦39円/?となっておりますが、麦の輸入は政府独占となっており、海外からの買い付け価格と国内での売り渡し価格の差額は政府の収入となります。これを主たる財源として、国内麦の価格補給制度を採っております。この政府の差額は、マーク・アップと呼ばれ、現在、小麦約17円/?、大麦約8円/?となっております。今回のTPP協定では、小麦のマーク・アップを9年目までに主要5銘柄については45%削減し、その他は50%削減することが約されました。また、TPP加盟の米国、オーストラリア、カナダにSBS方式による国別枠を設け、当初19.2万トン、7年目以降25.3万トンとすることとなりました。ちなみに、小麦の年間輸入は500万トン強となっています。さらに、小麦調整品(パン生地など)に関しては、新たにTPP国別枠を設け、当初4.5万トン、6年目以降6万トンとなります。なお、国家貿易以外の小麦製品(スパゲッティ等)の関税は9年目までに60%削減することとなりました。大麦に関しても、マーク・アップを9年目までに45%削減し、また、新たにSBS方式によるTPP国枠を設け、当初5万トン、9年目以降6.5万トンとすることとなりました。大麦の中で、主としてビール用となる麦芽については、関税数量割当制度となっておりますが、現在の関税割当数量の中で、米国、オーストラリア、カナダの国別枠を設け、その合計数量は、当初18.9万トン、11年目以降20.1万トンとすることとなりました。

3.乳製品
主要乳製品である脱脂粉乳、バター等に関しては、ほとんどが国家貿易(農畜産業振興機構(ALIC)による)となっており、例えばバターの関税は29.8%+985円/?ですが、政府が輸入し、国内価格で売り渡します。これらは、ウルグアイ・ラウンドのカレント・アクセス(現行輸入)約束として、生乳換算13.7万トン以上の脱脂粉乳、バターを輸入することとなっております。その他、バター、脱脂粉乳に関し、わずかに学校給食用等の特別用途向けに関税割当制度が採られており、この枠のバターの一次税率は35%となっています。今回のTPP協定では、国家貿易措置、枠外関税を維持するとともに、TPP国枠を設け、生乳換算で、脱脂粉乳、バターそれぞれに関し、当初2万659トン、3万9341トンとし、6年目以降2万4102トン、4万5898トン(合計6万トンから7万トン)とすることが合意されております。また、ホエイ(パン生地などに使われます)に関しては、脱脂粉乳との競合がありますが、輸入急増時のセーフガードを伴いながら、21年目に関税撤廃とされております。
チーズについては、TPP協定では、ナチュラルチーズのうちカマンベール等の高級チーズは現行関税を維持するとともに、チェダー、ゴーダ等は16年目までに関税を撤廃することとなっております。高級チーズは、欧州各国からの輸入が多いのに反し、ニュージーランド、オーストラリアは、チェダーやゴーダの輸出が主であることの反映かと思われます。なお、チーズに関しては、プロセスチーズ原料用に国内チーズとの抱き合わせを条件として無税枠が設けられておりますが、これも維持されます。

4.牛・豚肉
現在の牛肉の関税は、38.5%ですが、今回のTPP協定では、直ちに27.5%に引き下げ、10年目以降に20%に、16年目以降に9%に引き下げることとなります。その間に輸入急増した場合は、当初は38.5%、4年目以降は30%、11年目以降は20%、15年目は18%、それ以降は1%ずつ削減した税率に引き上げる条件で、いわゆるセーフガード(ウルグアイ・ラウンドの際は、いわゆる一般セーフガードとの違いを明確にするためスナップ・バックといわれた)措置を設けることとなりました。その発動基準については、ここ数年の輸入量が約50万トンから53万トンなので、発効時は59万トン、10年目に69.6万トン、16年目は73.8万トンとすることとなりました。
現在の豚肉の関税は、?当たり524円の分岐点価格以下のものは、個別輸入荷口ごとに輸入価格と基準価格の差額(差額従量関税)、分岐点価格以上のものは4.3%となっております。しかし、輸入業者は、高品質の部位と低品質の部位を組み合わせて一つの荷口(ロット)として、この差額関税をできるだけ避ける方向をとっております。今回のTPP協定では、この従価税を当初2.2%に下げ、10年目に撤廃とし、重量税の基準を当初125円/?に下げ(現行482円/?)、5年目に70円、10年目に50円に引き下げることとなりましたが、輸入急増の場合は、70円を100円に、50円を70円に引き上げるセーフガードを入れることとしております。

5.砂糖類及びでんぷん
現在は、砂糖の年間消費量約220万トンのうち約6割は輸入で、ALICによる一元輸入制度となっています。ALICは、輸入業者から平均輸入価格と国内価格(売り渡し価格)の差額を調整金として徴収し、瞬間タッチで売り戻す制度を採っております。今回のTPPでは、この糖価調整制度を維持しますが、高糖度の原料糖に関して、関税を無税とするとともに、調整金を削減することとなりました。また、500トン(粗糖換算)の無関税・無調整金の新商品開発用枠を設けることとなりました。また、でんぷんに関しては、現在の関税割当数量の中に、7500トンのTPP国枠を設けることとなりました。さらに、コーンスターチ、馬鈴薯等の一部のでんぷんに関しては、当初2700トン、品目により6年から11年目以降に3600トンの国別枠を設けることとなりました。

6.5品目以外の農産物の特例
小豆及びいんげん豆、こんにゃく並びにパイナップル缶詰の関税割当制度に関し、小豆等の枠内関税を撤廃するが、枠外関税は現行を維持し、こんにゃく及びパイナップル缶詰は、枠外関税を15%の削減にとどめることとしております。
また、鶏肉、鶏卵、オレンジジュース、リンゴに関し、11年目までまたはそれを越える関税撤廃までの期間の特例をもうけております。

7.林産物
マレーシア、ニュージーランド、カナダ、チリ及びベトナムからの合板、カナダからの製材について、16年目までの関税撤廃期間の例外を設けるとともに、その間のセーフガード措置が導入されました。

8.水産物
マグロ類、サケ・マス類、ブリ、スルメイカ等に関し11年まで、アジ、サバは12から16年までの関税撤廃の期間の特例を設けております。また、ノリ、コンブ等の海藻類の関税引き下げを15%とする例外を設けております。
なお、環境問題との関連で提起された漁業補助金に関しては、我が国の補助金が禁止補助金に該当しないよう措置されております。

9.衛生植物検疫措置(SPS)
基本的には、現行のWTO上の措置を踏まえておりますが、あらたに地域内の問題に関する協議規定を設けております。問題事項について、180日以内の解決を目指し、要請から37日以内に専門家が関与する協議を求めることが出来ることとされております。
 

( 文責:西野 俊一郎)

 

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