『村むらの開発をめざすNGO活動ハンドブック』
2000年3月、A5、255p
いま、多くのNGOが農村開発や農業に関わる活動を行っています。それらは、農村貧困層の自立への支援や、環境の劣化により低下した農業生産性の回復、荒廃した森林を回復させる植林など、グローバルイシューへの取り組みです。これらの問題は、いずれも解決困難なものであり、息の長い、忍耐強い努力の積み重ねが必要となります。
本書は、このような農村開発を目的としたNGO活動を、多くの人に理解してもらいたいとの願いをこめた入門書です。
また、農村開発と農業技術は密接な関係にありますが、現在までに農林業分野のNGO活動を農業技術者が解説した著作は多くありません。そこで本書は、技術的な事項にも重点を置きました。
<目次>
1.NGOとは何か
NGOの定義、NGOの活動分野と活動形態、NGO活動の理念、日本が受けた援助、NGO活動の特徴、NGOの歴史、データで見る日本のNGO
2.活躍するNGOの実態
1)日本のNGO (18団体を紹介)
2)欧米諸国の主なNGO
アメリカ、ドイツ、イギリス、カナダ、オランダ、フランス
3.政府および地方自治体とNGO
1)政府のNGO支援制度
2)地方自治体とNGO
地方自治体のNGO支援、大阪国際交流センターのセネガルにおける植林活動、鹿児島県とNGOの連携活動、山形県とNGOの連携活動、広島県のNGO活動支援、埼玉県国際交流協会、大阪市国際交流協会
4.開発途上国の農業の特徴
1)熱帯の気候
アジア、アフリカ、中央・南アメリカ
2)熱帯の土壌
熱帯に分布する主な土壌、水田の問題土壌、イネの栄養障害
3)貧困と低い農業生産性
4)農耕文化の多様性−稲作を例として
5)主な熱帯作物
ココヤシ、アブラヤシ、パラゴム、キャッサバ、ヤム、タロ、バナナ、パイナップル、コーヒー、カカオ、コショウ
6)農民農業と農園農業
7)焼畑農業
8)森林・マングローブの崩壊
9)植物遺伝資源
10)農業制度−農業技術普及
5.適正な協力課題と技術の選択
1)試行錯誤の国際協力
インドネシア西部ジャワ食糧増産協力、インドネシアにおけるトウモロコシの開発援助、援助依存症−JVCの経験、フィリピン・ネグロス等のバナナ栽培−JCNCの経験
2)適正技術
適正技術の意義、日本型とインド型イネの苗代播種法の差異
3)草の根農民技術
水稲の水苗代の表面を平らにする方法、水稲アウス・アマン混播法、トウモロコシの立毛保存法、籾殻灰による貯蔵ダイズのマメゾウムシ防除、雨期における野菜種子保存法、草木灰散布によるナスのshoot borerの防除、
木おけに竹筒をつけたじょうろ、肉用牛の離乳方法、鶏のひな用水飲みジャー、
住宅高床下を利用した蚕の飼育
6.ODAとNGO
1)政府開発援助
2)JICAによる技術協力
3)プロジェクト方式技術協力の事例
4)ODAの評価
5)ODAとNGOの連携
オイスカ農業者育成研修コース、JICAとNGOスタッフの研修、オイスカ研修センターにODAの導入、JICAとNGOが連携した技術協力、開発福祉事業、開発パートナー事業、NGO・外務省定期協議会、外務省のあたらしNGO支援策
6)欧米諸国におけるODAとNGOとの関係
アメリカ、イギリス、オランダ、カナダ
7.NGO活動の事例
1)作物栽培
マレーシア・ロジンハイランド傾斜地農業指導、ネパール・カカニ農場技術指導
2)山村開発
ラオス焼畑地域農村開発事業、ベトナム少数山岳民族の自立促進事業、タイ・メーコックファーム農業指導
3)畜産
インド・マハラシュトラ州酪農開発指導、ボリビア・サンタクルス州養鶏指導、中国最貧地域経済開発事業
4)植林
メキシコ・プエブラ州植林指導、AICAFの植林現地調査、タイJVC農業植林プロジェクト
5)農村技術
中国河南省竹工芸技術指導、パプアニューギニア農機具製作・修理技術指導、カンボジア籾殻利用代替燃料開発
6)人材育成事業−南南事業
南アフリカ・イシナンバ地域農村開発事業、ザイール・シャバ州農村開発事業、ラオス環境保護・高地農業事業、グアテマラ農村自立支援事業
8.NGO活動の課題
活動資金、専門技術と人材の育成・確保、ODAとNGOの連携、事業の評価