海外農林業情報 No.16(2012年12月28日)
第15回TPP交渉の結果
12月3日から12日にかけて、TPP交渉の第15回会合がニュージーランドのオークランドで開催されました。今回からは、カナダとメキシコが新しく交渉に参加し、合計11ヵ国から500を超える代表が参集しました。この会合は、今年9月のAPEC(ウラジオストク)の際、TPP交渉参加国の首脳および貿易担当大臣より出された宣言の中で来年10月までという期限が示されたことに基づく開催でした。本会合の報告は、議長国ニュージーランド政府から出されています。
この会合における目的の1つは、新たに参加したカナダとメキシコを交えての協議が滞りなく進むこととされていましたが、報告によると、両国とも予備的な協議を経て、参加体制を十分に整えてきたため、交渉の前進が見られたようです。
2つ目の目的は、2013年での交渉終了に向けて、共通の基盤を作るために、全ての議題にわたって議論を前進させることにありましたが、今回の交渉結果は、方向性が定まったものもあれば、進展がなかったものもありました。
例えば、貿易に係る技術的な障壁、通信、関税、SPSについては、交渉妥結に向けて明確な方向性が設定されたと言われています。複雑かつセンシティブな分野とされる知的所有権、環境、および投資については、技術的な問題についての前進はあったものの、センシティブな問題はなお残されたようです。関税と原産地規則の問題を含めた ”もの” の市場アクセスに係る交渉では、ニュージーランドのウォーカー首席交渉官が、「全体的なルールの構築に向け今後も交渉していく」と述べていますが、ほとんど進展は無かったようです。
また、来年(2013年)10月1日から8日の実施が予定されているAPEC(インドネシア)でTPP交渉の妥結に向けた最終的な決定がなされるとされ、それまでにあと3回の交渉が予定されているようです。来年最初のTPP交渉は3月にシンガポールで、2回目を5月にペルーでの開催が予定されていますが、3回目については時期を9月とするものの、場所については未定のようです。
農業に関しては、SPSと、市場アクセスにおける酪農や砂糖などの2国間交渉が問題があることが今回の交渉で認識され、残りの交渉の進展が注目されます。
TPP交渉では、これまでに、TPP交渉参加国からの利害関係者に対し、話し合いの場が公式に設けられる等、WTO交渉を含めた従来の貿易交渉にはなかった方式がとられており、今回も一時的に交渉を休止し、12月7日に交渉担当らが300を超える利害関係者と面会したようです。そのうち、70はTPP交渉参加国からであり、幅広い問題についての発表を行ったとされています。
一方で、TPPに反対する集会が12月8日にTPP交渉会場の近くで開かれました。集会では、抗議集団の主催者であるオークランド大学ジェーン・ケルシー教授が、TPP交渉の秘密性に抗議する75万人分の署名を集めた嘆願書をニュージーランド政府副交渉責任者に手渡したとされています。また、集会参加者とニュージーランド警察の間で小さな衝突があったとも伝えられており、今後のTPP交渉においても反対意見がどのように汲み取られるのかが注目されます。
参考リンク
・Round 15 concludes in Auckland(New Zealand Ministry of Foreign Affairs & Trade、英語)
・TPP Chief Negotiatiors Pleased to Report Continued Progress(USTR、英語)
・New Zealand Delegation receives petition(New Zealand Ministry of Foreign Affairs & Trade、英語)
(文責:西野 俊一郎)