『海外農林業情報』No.36

海外農林業情報 No.36 (2014年10月20日

 

FAOのFood Outlook(2014年10月)について

FAOのFood Outlook 2014年10月版が公表されました。そのうち、穀物および油糧種に関する主な内容は次のとおりです。

小麦:2014年の小麦生産量は718.5百万トンと予測され、記録的な生産増加があった2013年に比べても少し増となっている。国別では、ロシア、中国、インドの増産が、オーストラリア、カナダ、米国の減産を上回る予測となっている。2014/15年度(注)の小麦消費は前年度に比べて1.7%多い701百万トン程度と見られているが、これは、主として飼料用小麦の供給量拡大によるものである。以上の需給状況から2015年における期末在庫は、2003年以降最も多い192.4百万トンになると見られており、最近の小麦の国際価格は低下傾向であり、9月にはこの4年間で最も低い水準となっている。また、貿易量は前年度に比べて7.3百万トン減の150百万トンとなっており、主にアジアおよびアフリカの輸入需要が低下したことが原因とされている。

粗粒穀物:2014年の粗粒穀物の生産量は2013年とほとんど変わらない1308百万トンと予測されている。このうち、トウモロコシは、2013年の記録的な生産量よりも0.7%増加し、1018百万トンと見込まれている。この生産増は主として、中国、米国、さらにEU、ロシアでのものである。他方、大麦は140.2百万トンと昨年より4%減となっている。これは、EU、北米、オーストラリアの減産によるものである。また、ソルガムについては、60.1百万トンと昨年とあまり変わっていない。2014/15年度(注)の粗粒穀物の消費は、前年より1.9%増の1260百万トンと見込まれている。その結果、2015年の期末在庫は、年当初の水準から16%増の257.4百万トンと見込まれ、これは、1986/87年以来の高水準となっている。このことから、国際価格は低下傾向にあり、9月のトウモロコシ先物は、昨年に比して25%下がっている。また、2014/15年度の貿易量は、輸入国での増産が影響し、147百万トンと前後比6.9%の減となっている。この大きな減少は、主としてトウモロコシで、4.5%減の114百万トンとなっている。さらに大麦も少し減少し、21百万トンとなり、ソルガムも60万トン減の7.5百万トンとなっている。

コメ:国際コメ価格は、2014年の5月から8月の間は、コメ生産への異常気象の影響と主要輸入国の買入れの回復によってじりじりと上昇した。しかし、9月に入って新穀の保管スペース確保のため、輸出国の激しい売り競争があり、下がってきている。生産予測は、ここ数ヵ月の全地域での異常気象で悪化してきているが、2014年の世界コメ生産量は、496.4百万トン(精米ベース)とわずかに減と予測されている。インド、インドネシア、ネパール、スリランカおよびタイの主生産国の生産は減少が見込まれているが、北半球の二期作国のものは、これから来年にかけての刈り入れとなるため、まだ不確かなところがある。国際価格が比較的安いことと、これからの生産が減少する予測があるため、2014年は多くの国が国際市場で買いに入ったことと、主要輸出国の供給が増加したことから、2014年暦年の貿易量は39.7百万トンと7%の増となっている。2015年の貿易用もわずかではあるが増加し、40百万トンと見込まれている。アジアの国々に比して、アフリカ諸国の伸びが大きいためである。しかし、輸出国に十分な余力があるので、これに十分応えられると見られる。2014/15年度(注)のコメの世界消費量は1人あたりの消費増により、前年比1.7%増の500百万トンと見込まれ、2015年末の在庫はここ10年ではじめて減少すると見込まれる。しかし、その量は、2015/16年度のコメの消費量の3分の1を超える巨大なものである。

油糧種子:現在、2014/15市場年の油糧種子の世界全体の供給と需要のバランスは更に改善すると見込まれている。油糧種子の生産については、大豆の生産拡大によって、前年の記録的な生産を超えると予測されている。トウモロコシとの相対価格が大豆に有利であったことから、南米での植栽面積の増があり、また、米国では植栽面積増と生育期の好天で、大豊作となっている。大豆以外の油糧種子はほぼ変化はなく、また、パームオイルの生産は少し低かったが依然として伸びている。大豆の記録的な生産の中で、植物油としての生産量は、伸びが悪かったため、2014/15年度の油かす(ミールとケーキ)の供給量の増大が激しく、需要量を上回ると見込まれ、この在庫増となると予測されている。他の飼料穀物の供給増もあり、油かすの2014/15年度の価格は低下傾向を続けると見られるが、植物油の価格は現在の水準を維持すると見込まれる。油糧種子及びその製品の2014/15年度(注)の国際貿易は、前年度よりさらに増加すると見込まれるが、国内生産の増と中国・EU等の生産国での在庫が大きいことから、その伸びがスローダウンすると見込まれる。また、輸出側でも、米国、マレーシア、インドネシア、ブラジル等で、少し生産状況が良くないこと、国内での消費が増大していること、在庫の積み増しが必要であるという事情もある。

注:各作物の年度は、小麦および粗粒穀物(7月/6月)、コメ(1月/12月)、油糧種子(10月/9月)

<参考リンク>
Food Outlook(FAO、英語)

(文責:西野 俊一郎)

 

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