『海外農林業情報』(No.5 2012 年3月13 日号)
ビル&メリンダ・ゲイツ財団の農業分野への支援状況
近年、先進各国のアフリカ農業へのODA が減少する中で、「ビル&メリンダ・ゲイツ財団」が、「サブサハラ・アフリカおよび南アジアの貧しい農家における飢餓と貧困の削減」のために大きな資金提供を行うことが注目されています。同財団は、「食料安全保障」への支援として過去10 年間に約20 億ドルを拠出してきましたが、更に、今後5年間に20 億ドルの支援を表明しています。これは、同財団のマラリア等風土病対策を含む「グローバルヘルス」対策に次ぐ金額となっています。そのうち、約6億8,000 万ドルについては、主要な拠出先と具体的な内容が明らかにされています。この内容を同財団の分類に従って分野別にご紹介します。
拠出先・目的・金額(単位:千US ドル)
I.研究開発
・アフリカ緑の革命のための同盟(AGRA:Alliance for a Green Revolution in Africa)
サブサハラ13 ヵ国の新品種に関する各国の育種プログラムの支援と人材育成
100,000
・国際食糧政策研究所(IFPRI:International Food Policy Research Institute)
トウモロコシ等栄養強化主食用穀物の開発と普及の支援
45,000
・アフリカ農業技術基金(AATF:African Agricultural Technology Foundation)
サブサハラ・アフリカ5ヵ国の乾燥耐性トウモロコシの開発
39,100
・国際トウモロコシ・コムギ改良センター(CIMMYT:Centro Internacional de Mejoramiento de Maize y Trigo)
サブサハラ・アフリカ13 ヵ国の乾燥耐性トウモロコシの開発
33,300
・コーネル大学(Cornell University)
ぜい弱地におけるカビ病耐性小麦の開発
26,800
II.農業政策
・国際復興開発銀行(IBRD:International Bank for Reconstruction and Development)
開発途上国の農業生産性向上と食料安全保障支援のための基金への寄付
30,000
・IBRD
サブサハラ・アフリカ6ヵ国の生活水準調査
19,400
・AGRA
モザンビーク、タンザニア、ガーナ、マリ及びエチオピアにおける農業政策の問題点の解明
15,000
・国際アグロフォレストリー研究センター(ICRAF:International Centre for Research on Agroforestry)
農業研究分野におけるアフリカ女性の能力向上奨学金
13,900
・IFPRI
農業開発投資の効果を明らかにする地理情報システム(GIS)開発
8,500
III.流通と市場システム
・AGRA
土壌改良・肥料投入によるアフリカ農業の発展基盤の確立
164,600
・国際連合世界食糧計画(WFP:United Nations World Food Programme)
小規模農家の生産物をWFP の購入につなげる計画の策定
66,100
・TechnoServe Inc.
東アフリカにおけるコーヒーによる収入の倍増
46,900
・Heifer Project International Inc.
ケニア、ルワンダ、ウガンダにおける酪農家による冷却施設、集荷施設設置による拠点整備
42,800
・AGRA
小規模農家が主食作物販売で得る収入増加のための市場アクセス改善
28,000
この他、日本の団体に関する拠出としては、「笹川アフリカ協会(SAA:Sasakawa Africa Association)」がエチオピアにおける小規模農家の生産性の向上や収入の改善を目的とした農業普及事業への資金提供を受けています。
ゲイツ財団の支援は、大学、企業、NGO のいずれも対象としており、「アフリカの小規模農家の生活向上に資する」ことを目的にしています。
参考リンク
・ビル&メリンダ・ゲイツ財団のStrategy Overview
・笹川アフリカ協会(上記事業概要)
(文責:西野 俊一郎)