海外農林業情報 No.14(2012年11月13日)
世界食料デーについて
先月10月16日はFAO(国際連合食糧農業機関)が定めた世界食料デー(World Food Day)でした。FAOは、加盟国191ヵ国(+EU)、職員数約3,600名の国連専門機関であり、活動的かつ健康的な生活を送るために必要十分で栄養価に富む食料へのアクセスを、人々が常時得られることを使命とし、情報の収集・提供、政策提言、中立的討議の場の提供、開発援助を主要業務としています。
FAOでは毎年10月16日を世界食料デーとし、飢餓や貧困に対する活動を促進しています。この世界食料デーは、FAOが設立された1945年10月16日を記念して、1979年11月の第20回総会の決議に基づき設定されたもので、以下を目的としています。
1)食料生産に注意を促し、国内、二国間、多国間、非政府機関における努力を促進する
2)途上国間の経済的および技術的な協力を促進する
3)それらの活動や決定に対し、農村、特に女性や最も権限のない人々の参加を促進する
4)飢餓の問題に対する社会の意識を高める
5)開発途上国への技術移転を促進する
6)飢餓、栄養失調、貧困に対する戦いに対し、国際的、国内的な団結を強化し、食料と農業開発の成果への関心を集める
毎年夏頃に発表される世界食料デーのテーマは、その時々における注目すべき問題を反映しています。これまでは「食料安全保障」、「農業における女性」、「農村の貧困」、「水」、「漁民」などがテーマとして取り上げられ、1981年からは毎年、それらテーマに合わせた記念行事を実施してきました。
昨年(2011年)のテーマは、現在も注目を集めている「食料価格」でした。食料価格問題については、昨年のG20の閣僚級会合で、食料価格乱高下を防ぐ仕組みとして市場の情報の流れを改善し各国の政策対応の協調を促進するための農業市場情報システム(AMIS)が設立されています。今年は、北米を中心とした干ばつによる穀物価格上昇で緊迫した状況となり、急遽FAOの主導で、閣僚級会議が実施されました(前号参照)。会議では、市場の透明性、国際的行動の協調、食料需要増大への対応、弱い立場の人々への影響への対策等が話し合われています。
そして今年、2012年は、国連が定めた国際年である「国際協同組合年」に合わせ「農業協同組合―世界の食料供給の要―」をテーマとしました。FAO事務所を中心に、世界各地で催しが実施されており、特にアフリカ南部のレソトでは政府、民間、開発パートナー、農民組合が参加するハンガーウォークが行われ、食料に関する問題について関係者の意識を高めています。
これらテーマは、翌年に新しいテーマが発表されるまでの間有効で、1年を通じてさまざまな活動が行われます。日本では、NGOを中心とした多くのアクターによるネットワークが、10月を”「世界食料デー」月間”として、プレイベントを含むさまざまな取り組みを行なっています。今年も、日本全国で食料問題を紹介するセミナーやチャリティイベント等の活動が行われました。
FAOの統計情報について
FAOは、これまでに得られた統計情報を取りまとめた統計データベースを構築し、ウェブ上で提供しています。データベースには、FAOSTAT(農林水産業、食料援助、土地利用、人口統計データベース)、FISHSTAT(漁業統計データベース)、FORIS(林業統計データベース)、GLIPHA(家畜生産・家畜衛生に関する地図化システム)、AQUASTAT(水と農業に関する情報システム)等、さまざまな種類があります。これらの利用方法については、簡単な日本語マニュアルが無料公開されているほか、JAICAFの運営するFAO寄託図書館でも、個別の問い合わせ対応や関連資料の案内を行っています。
参考リンク
・World Food Day(FAO、英語)
・「世界食料デー」月間2012(「世界食料デー月間」の活動紹介、日本語)
・FAO Statistics
・FAOSTAT利用の手引き(2012年改定版)
・FAO寄託図書館(FAO日本事務所内、入館無料)
(文責:西野 俊一郎)