『海外農林業情報No.37』

海外農林業情報 No.37 (2014年11月19日


北京でのTPP首脳級会合について
TPP交渉参加国による首脳級会合が、11月10日に北京で開かれ、そのステートメントが発表されています。ステートメントでは、8日に開催された閣僚会合からの報告を踏まえて今回の会合で著しい進展があったと評価し、TPP交渉を終結するためのステージが示されていると述べられています。また、その閣僚会合の結果を用いて、閣僚ならびに交渉担当者には、最優先で合意を終結させるよう指示するとしています。さらに、合意に関連して、交渉参加国それぞれの発展段階に応じた多様性を十分踏まえた協定とすることにも言及しており、いわゆる途上国に対する適用除外措置等を含むものであることが示唆されています。
具体的な内容に関しては、閣僚会合報告の中で明らかにされていますが、中でも、モノ、サービス、投資、金融サービス、ビジネスパーソンの一時的入国、政府調達等に関しては、それぞれの国の間で、二国間問題として交渉が必要で、さらに共通ルールとして、IP(知的財産)、SOE(国有企業)、環境、投資に関する協定文書の詰めを行う必要があるとされています。閣僚会合報告では、総合的な市場アクセス問題、地域協定としてのルール問題、新しい貿易措置に関するルール問題、分野横断的な問題の4分野にわたって報告を行っており、その内容は次のとおりです。


1.市場アクセスの問題
(1)モノの市場アクセスについて、お互いの国のパケージを終結させるとし、また、その中で、特定の品目および特定の国で作業が残っていることが示されています。これに関しては、日本側と米国を除く他の国については、ほぼ合意ができていると言われていますが、米国との間に自動車、牛、豚肉の問題が残っていると伝えられています。
(2)サービス、投資、金融サービス、政府調達、一時入国に関しては、作業が続けられているとしつつも、結論に非常に近づいているとしています。このうち投資、金融サービス、政府調達について、開発途上国をどのように扱うか、どのような例外扱いを認めるかが問題として残っていると伝えられています。

2.地域協定としてのルールの問題
(1)地域協定のルールとしては、ほとんどのモノに関しての原産地規則の共通ルールについて、大幅な前進が見られたと言われていますが、一部の開発途上国の特定産品、具体的には繊維や靴に関する取扱いが残っていると伝えられています。
(2)通関手続きおよび急送便問題に関して、協定の方向性は見えており、合意の方向に向かっているとされています。
(3)非関税障壁に関しては、この問題に対する、SPS(衛生植物検疫)を含む諸規則の調整問題についてはほとんど合意に達しているとしています。また、健康、安全、環境保護のための公益を十分保護するという原理を各政府が保持しつつ、その規則を調整することに言及されています。

3.新しい貿易措置に関するルール
(1)電子商取引振興のルールについてはほとんど合意に至っているとされています。
(2)SOEのルールを含む公正な競争に関しては、私的な企業と同一の競争条件に立つようにすることについて進展が見られたとされています。これに関しても、発展段階に応じた例外をどう扱うか、また、中央政府のみを対象とし、これより下位の行政を含めるどうかという問題が残っていると伝えられています。
(3)知的所有権は最も複雑な問題であるものの相当の進展が見られており、一方で、TPP各経済、各加盟国の経済状況に応じた多様性を持つことについて言及されています。これに関しては、生物性薬品の試験データの公開時期、所有権の期間の問題等が残されていると伝えられていますが、途上国の実施期間の猶予を与える方向で調整されていると言われています。
(4)環境問題については、環境に関する規則のルールにおいて、強制力を含めた形での合意で進展しているとされています。
(5)労働問題に関して、ILO(国際労働機関)の権利を実現するような約束を強制力を持った形で合意するという終結に向かっているとされています。

4.分野横断的な問題
(1)合意事項については透明性を確保しつつ実施過程を明確にすることを含めて規制措置を改善し、規則の一貫性を推進する方向で、すでに一致しているとされています。また、雇用を促進するような協定とするということでほとんど合意されています。
(2)中小企業が合意の利益を十分確保できるようにするとし、また、透明性、適正な統治、汚職の撲滅強化努力を行うことに合意を行うこととしています。さらに、この合意を享受できるように、開発途上国に対する能力向上のための機会を準備すること、女性ならびに低所得者の経済機会の改善について十分な配慮をすることとし、キャパシティビルディングの措置、過渡期の確保、官民協力の奨励を含めるような協定を実現するということが合意されています。

<参考リンク>
Trans-Pacific Partnership Leaders’ Statement(USTR、英語)
Trans-Pacific Partnership Trade Ministers’ Report to Leaders(USTR、英語)
 

(文責:西野 俊一郎)

 

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