海外農林業情報 No.51 (2015年11月5日)
TPP 交渉の合意内容とその後の動きについて
TPP 交渉について、交渉参加12 ヵ国が大筋合意を発表したのは10 月5日ですが、日本では、大きな問題となった農林水産物に関し、農林水産省が「TPP 対策本部」を設置し、10 月15 日から各地で説明会を実施して関係者への説明に力を入れているようです。
また、日本政府は10 月20 日に大筋合意した関税引き下げの全容を公表しました。わが国の工業製品では99.9%の品目について撤廃を約束しており、例外となっているのは皮革製品のみとされています。農産品では発効後の即時撤廃が51%、最終的に81%で関税が撤廃される予定です。農林水産品全体として、2328 品目のうち1885 品目が撤廃対象になっており、一方で、例外扱いとして、コメ、牛・豚肉、乳製品などの重要5品(税番分類では586 品目)、また、重要5品以外にも雑豆やコンニャク関連が例外扱いとされています。 なお、重要5品のなかでも、輸出実績がなくて影響がないと判断された税番品目については関税撤廃対象となっています。さらに、日本政府は、10 月22 日には、31 分野のルールの協定内容を公表しています。
しかし、これらは大筋合意の内容であり、協定文書に関しては、10 月17 日から10 月末まで、東京で担当者の間での詳細詰めと翻訳作業(正文は英仏西語の3本ということとなっています)が行われており、さらに、最終的な確認のためには、なお、数回の会合が必要と言われています。ちなみに、ウルグアイ・ラウンドの際は3ヵ月を要しました。
米国としては、この正式の協定文書を先ず議会に提出してから、90 日経過後に大統領が署名する権限を持つことになっており、米政府自ら合意内容を発表することにはまだ慎重なようです。しかし、米国内では生物製剤のデータ保護期間に大きな不満が出ており、議会上院の担当委員長が否定的な意見を表明し、また、民主党における次期大統領選挙の有力候補であるヒラリー・クリントン前国務長官も、TPP に関して批判的な立場をとったとされ、懸念が生じているようです。このため、オバマ政権としては、できるだけ現政権のうちにTPP 協定の批准に持ち込みたいとの意向があり、年内の協定文の議会提出、3ヵ月後の署名、年内の議会承認を目指しているようです。
なお、懸念されていたカナダに関しては、10 月19 日の総選挙において野党勝利となりましたが、次期首相候補となるトルドー党首は、TPP の支持を表明しました。
<参考リンク>
関税95%撤廃 政府が合意全容を公表(日本経済新聞電子版、無料会員登録が必要)
( 文責:西野 俊一郎)
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