『海外農林業情報』No.62

海外農林業情報 No.62 (2016年8月15日


世界の穀物需給
 世界の穀物需給に関しては、先号でお知らせしたところですが、8月12日の米国農務省の発表によると、注目されていた7月下旬と8月初旬の米国中西部の天候が非常によく、トウモコロシは152億トン(前月比6億1,300万トン増)あるいは1エーカー当たり175.1ブッシェル※(前月比7.1ブッシェル増)、大豆は40億6,000万トン(前月比1億8,000万トン増)あるいは1エーカー当たり48.9ブッシェル※(前月比2.2ブッシェル増)と、さらなる増産が予想されています。そのため、シカゴの先物市場からヘッジファンドが引いて行く状況となり、穀物価格が一段と安く、かつ、安定的に推移しています。南半球の生産、さらには欧州等の小麦の生産も好調で、全体として、2016/17年度の穀物の国際価格は、安値安定を続けていくものと思われます。

TTIP協定交渉の動き
 英国のEU離脱(Brexit)の国民投票後初めてのTTIP(Transatlantic Trade and Investment Partnership)協定交渉が、7月11日から15日までブリュッセルで行われました。その後の米国側の発表では、ほとんどすべての分野で原案(text)は出来上がっており、今や、一段と相違点を詰め、合意文書を作成する過程に深く入っているとされています。
 今回の交渉では、英国のEU離脱問題の影響がどうなるか関心が持たれたところですが、交渉官同士では、「BrexitはTTIPに影響はあるが、この協定は戦略的にも、経済的にもそれを超えて合理性が強い」としています。また、本年中の合意に関しては、十分可能との判断を示していますが、そのためには、まず政治的な意思決定が必要としています。次回の交渉会議を10月としており、特に、9月23日のEU貿易大臣会合、10月20,21日のEU首脳会議における交渉の意思決定待ちというところかと思われます。なお、この会合では、BrexitのTTIP交渉での取り扱いも議論されるのではないかと言われています。一部には、この協定は環大西洋と言っている通り、米・EU間で合意した後、ノルウェー、カナダ等他の国の参加を可能とするのではないか、それなら、英国抜きの米・EU協定にし、後に英国の参加を求めることも可能ではないかとの意見も出ているようです。この中で、英国が関税譲許、サービス譲許を行えば、人の自由移動を抜いた形でのEU諸国との貿易関係の現状維持に近い関係が保てるのではないかとの考えもあるようです。

※ 1ブッシェルは、トウモロコシの場合25.4kg、大豆は27.2kg

<参考リンク>
World Agricultural Supply and Demand Estimates Report (WASDE)(USDA、英語)
シカゴ先物市場(CME)ウェブサイト(日本語)
Statement by Assistant USTR Dan Mullaney at the 14th Transatlantic Trade and Investment Partnership Negotiating Round(USTR、英語)

( 文責:森 麻衣子)
 

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