海外農林業情報 No.45 (2015年7月17日)
TPP 交渉の大筋合意に向けた最近の動き
TPP 交渉進展のかせとなっていた米国議会におけるTPA 法(貿易権限法)案が、6月24 日に上院で可決されました。また、関連として米国民主党の関心の深いTAA 法(貿易関連援助法)が下院でも可決されたことを受けて、大統領は6月29 日にTPA 法案に署名し、正式に成立することになりました。これを受けて、TPP 交渉参加各国との協議の末、米国の主唱により、ハワイのマウイ島において7月14 日-27 日に首席交渉官会議、続いて28日-31 日に閣僚会議が開かれることとなりました。
TPP 交渉は、各国共通のルール作りと関税を中心とした二国間のFTA(自由貿易協定)の積み上げに分けて交渉されています。現在残っている問題点としては、ルール作りに関して、知的所有権、とくに薬品データの保護期間についてと、投資に関する紛争処理(ISDS条項)、政府調達とくに労働問題等の例外扱いについてのようです。また、二国間のFTAについては、日米間では農産物(コメ)および自動車の問題、米国とカナダ間では牛乳・乳製品および鶏肉の問題、更にはニュージーランドの酪農品に対する解放要求等の問題があるとされています。
米国としては、TPA 法により、署名の90 日前までに議会への通報が必要となっており、年内署名を目指すためには、7月中に大筋合意に至る必要があると捉えていると考えられ、そのために上記日程が組まれたと思われます。とくに閣僚会議の期間を7月最終週の4日間と決定していることは、米側のTPP 締結への並々ならぬ意向の表れではないかと思われます。
このような情勢の下で、7月9日から10 日にかけて日米二国間の交渉が行われました。交渉修了後、大江首席交渉官代理は「今回整理された問題もあり、最後は政治判断を仰ぐ」と述べており、カトラー次席代表代行も「合意に至る道のりを明らかにできた」と述べており、日米間においては基本的に政治的に決着ができるという見通しが立ったということであると思われます。また、カトラー次席代表代行は、「コメの数量の問題は残っているが、ゴールはお互いに分かっている」とコメントしており、これが政治決着のポイントと思われます。
日米の基本的な合意を受けた場合、米国としては、残されたカナダとの交渉等、一部問題を積み残してでも合意に至るという意向を強く持つといわれており、7月末のTPP 交渉の方向が明確になってきたと思われます。
( 文責:西野 俊一郎)
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TPP 交渉の大筋合意に向けた最近の動き
TPP 交渉進展のかせとなっていた米国議会におけるTPA 法(貿易権限法)案が、6月
24 日に上院で可決されました。また、関連として米国民主党の関心の深いTAA 法(貿易関
連援助法)が下院でも可決されたことを受けて、大統領は6月29 日にTPA 法案に署名し、
正式に成立することになりました。これを受けて、TPP 交渉参加各国との協議の末、米国
の主唱により、ハワイのマウイ島において7月14 日?27 日に首席交渉官会議、続いて28
日?31 日に閣僚会議が開かれることとなりました。
TPP 交渉は、各国共通のルール作りと関税を中心とした二国間のFTA(自由貿易協定)
の積み上げに分けて交渉されています。現在残っている問題点としては、ルール作りに関
して、知的所有権、とくに薬品データの保護期間についてと、投資に関する紛争処理(ISDS
条項)、政府調達とくに労働問題等の例外扱いについてのようです。また、二国間のFTA
については、日米間では農産物(コメ)および自動車の問題、米国とカナダ間では牛乳・
乳製品および鶏肉の問題、更にはニュージーランドの酪農品に対する解放要求等の問題が
あるとされています。
米国としては、TPA 法により、署名の90 日前までに議会への通報が必要となっており、
年内署名を目指すためには、7月中に大筋合意に至る必要があると捉えていると考えられ、
そのために上記日程が組まれたと思われます。とくに閣僚会議の期間を7月最終週の4日
間と決定していることは、米側のTPP 締結への並々ならぬ意向の表れではないかと思われ
ます。
このような情勢の下で、7月9日から10 日にかけて日米二国間の交渉が行われました。
交渉修了後、大江首席交渉官代理は「今回整理された問題もあり、最後は政治判断を仰ぐ」
と述べており、カトラー次席代表代行も「合意に至る道のりを明らかにできた」と述べて
おり、日米間においては基本的に政治的に決着ができるという見通しが立ったということ
であると思われます。また、カトラー次席代表代行は、「コメの数量の問題は残っているが、
ゴールはお互いに分かっている」とコメントしており、これが政治決着のポイントと思わ
れます。
日米の基本的な合意を受けた場合、米国としては、残されたカナダとの交渉等、一部問
題を積み残してでも合意に至るという意向を強く持つといわれており、7月末のTPP 交渉
の方向が明確になってきたと思われます。