『海外農林業情報』No.46

海外農林業情報 No.46 (2015年7月24日)

 

世界の食料需給と価格の動向

 

7月10日にUSDAから世界の食料需給予測(World Agricultural Supply and Demand Estimates: WASDE 543号)が発表されました。

 

1.小麦

米国の小麦については、冬小麦(Hard Red Winter, Soft Red Winter and White Wheat)の生産減を上回る形で、春小麦の生産が伸びることにより生産増の見込みとなりました。輸出については、低いレベルにあった2014/15年度から11%伸びると見られていますが、それでも過去5年間の平均から大きく下回っています。しかし、価格はトウモロコシ価格の上昇見込みに引きずられて上昇しています。

世界における2015/16年度の小麦生産量は僅かに前年度より減少するものと予測されています。欧州やカナダの減産を黒海周辺の生産量増大が相殺すると見られています。世界の総生産量は722百万トンに上ると見られ、これは昨年度の記録的な増産より低いものの、それに次ぐ高い値となります。2015/16年度の世界の小麦消費量については、主に中国の飼料消費の減少により、5.4百万トン下がる見込みです。

 

2.トウモロコシ

米国の2015/16年度のトウモロコシ生産量は100百万ブッシェル(1ブッシェルは約25.4kg)の減産と見られ、これは6月30日の栽培面積の調査による縮小が反映されています。米国のトウモロコシ消費量については、エタノール用の消費拡大を飼料用と輸出の減少が相殺して、全体として減少すると見られています。

2015/16年度の世界全体の粗粒穀物について、トウモロコシ生産量は2.2百万トン減少の見込みであり、これは、ブラジルと中国の増産にもかかわらず、米国と欧州の減産によるものと見られています。欧州のトウモロコシ生産量は2.4百万トン減産の見込みであり、これは主要作付地域における最近の高温と、それによる乾燥の拡がりによって収量低下が予測されているためです。とくにセルビア近辺の高温と乾燥が懸念されています。ブラジルでは、作付予定の栽培面積拡大により2百万トンの増産が見込まれ、中国では、同様に作付面積の拡大により百万トンの増産が見込まれています。

欧州における飼料用トウモロコシの消費量は、国内の穀物供給量低下にもかかわらず輸入に支えられて拡大が見込まれています。

 

3.コメ

米国の2015/16年度の全てのコメ消費量は、生産量減少の影響を受けて11百万cwt(1cwtは約45kg)減少し、278.4百万cwtと見込まれています。供給量については、長粒種で12.5百万cwt減少し、一方で中粒種と短粒種で1.5百万cwt拡大する見込みです。作付け報告によると、栽培面積は2.77百万エーカー(1エーカーは約0.4ha)に上ると見込まれ、それぞれ長粒種で2.07百万エーカー、中粒種と短粒種で0.69百万エーカーと予測されています。単収については、エーカーあたり7544ポンド(1ポンドは約450g)が見込まれています。

世界全体での生産量は、480.3百万トンに上ると見られ、先月の見込みから1.4百万トン下がっていますが、それでも昨年と比較して4百万トン多く推定されています。タイでは、主要生産地域における乾燥気候で4%減産して19百万トンとなると予測されていますが、これでも2014/15年より少し多い状態にあります。同様に北朝鮮の主要生産地域においても乾燥状態により6%減産して1.6百万トンと見込まれています。また、タイの輸出量は0.8百万トン減少し、10.2百万トンと予測されています。

 

4.油糧種子

2015/16年度における米国の油糧種子は、115.1百万トンと見込まれ、主にダイズの増産により百万トン拡大する予想となっています。

2015/16年度における、世界全体の油糧種子生産量は531.8百万トンと予測され、先月予測から少し減少しています。そのうち大豆生産量は、主に米国とボリビアの生産増により1.3百万トン増えて318.9百万トンと予測されています。菜種については、主にカナダにおける栽培面積拡大にもかかわらず単収が下がって、生産量が減少すると予測されています。

 

5.最近の穀物市場価格の動向

このような食料需給見込みを受けて、シカゴ相場は落ち着いた動きが期待されていましたが、投機資金が流れこむ動きがあり、7月に入って一時は大幅な値上がりを示しました。ギリシャの債務問題の関係で、世界経済の不安が拡大したことで、他の商品市場の低落が予見され、気象相場による値上がりを期待して、投機資金が穀物市場に流入したためでした。しかしその後、ギリシャの問題に一定の目処が立ち、また、イラン核開発制限が合意されたことから、投機資金の穀物市場への流入が減り、穀物市場の沈静化が見られるようです。

 

(文責:西野 俊一郎)

 

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